宇宙への憧憬、地に足をつけて
（社説）
先日、ある報道によると、来年8月25日に「宇宙博」と銘打たれたイベントが開催されるという。切手の博物館を会場に、宇宙の神秘に触れる企画らしい。宇宙開発が人類の夢であり、未来への希望であることは、疑いようのない事実であろう。しかし、その輝かしい未来を語る前に、我々はこの現実、すなわち「大地」にしっかりと目を向けるべきではないだろうか。
宇宙への探求心は、人間の根源的な好奇心であり、それを刺激するイベントは、確かに魅力的なものに違いない。宇宙博が、子供たちの知的好奇心を掻き立て、次世代の科学技術者を育成する一助となることを期待する声もあるだろう。しかし、その一方で、我々は身近な問題に目を向けるべき時ではないかと、私は静かに問いかけたい。
少子高齢化が進み、社会保障制度が岐路に立たされている。地方経済は疲弊し、多くの人々が将来への不安を抱えている。教育、医療、福祉といった、国民生活の基盤となる部分に、こそ、我々がもっと真摯に向き合うべき課題が山積しているはずだ。宇宙の壮大さに思いを馳せることは、決して悪いことではない。むしろ、それは人間の精神の高みを示すものでもあるだろう。しかし、その高みを目指す前に、足元を固めることが、より喫緊の責務であると考えるのは、保守的な立場からすれば、当然のことと言える。
宇宙開発への投資は、莫大な費用を必要とする。その資金を、今、本当に優先すべき分野に振り向けることはできないのだろうか。子供たちの教育環境の整備、高齢者の生活支援、地域経済の活性化。これらの課題に、我々がどれだけの情熱と資源を注いでいるだろうか。宇宙という未知の世界に魅せられる前に、我々が生きるこの世界、この国を、より豊かで、より安心できる場所にするための努力こそが、今、何よりも求められているのではないでしょうか。
「宇宙博」というイベントが、単なる夢物語で終わることなく、現代社会が抱える現実的な課題への意識を高めるきっかけとなることを願う。宇宙への夢を追いかけることは大切だ。しかし、その夢は、地に足のついた、確かな現実の上に築かれるべきである。我々は、まず、この足元の土を耕し、豊かな実りをもたらすことに、全力を尽くすべきなのである。
切手の博物館から、宇宙の神秘へ誘う！「宇宙フロンティア」展解説動画第二弾、公開のご案内,切手の博物館
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