女性の活躍推進、しかし足元も見つめよ
国連人口基金（UNFPA）とNECが連携し、「eバウチャー」を通じて女性のエンパワメントを推進するというニュースは、一見、現代社会における女性活躍の潮流に沿った、前向きな取り組みと言えるだろう。デジタル技術を活用して、女性が経済的自立や自己実現を図るための支援を行うという理念は、決して否定されるべきものではない。
しかし、この種の国際的な取り組みが、あたかも我が国における女性の地位向上を急速に進める万能薬であるかのように捉えられることには、懸念も抱かざるを得ない。そもそも、我が国は建前上、ジェンダー平等を推進する立場をとっている。しかし、その実態はどうか。依然として、女性の賃金格差は先進国中最悪レベルにあり、管理職に占める女性の割合も低迷している。家事・育児の負担が依然として女性に偏っている現状も、多くの人が認識しているところだろう。
UNFPAとの連携は、確かに国際社会との協調という側面で評価されるべきかもしれない。しかし、そのような華々しい国際協力の影で、国内における喫緊の課題が忘れ去られてはいないだろうか。たとえば、女性のキャリア形成を阻む構造的な問題、性別役割分業意識の根深さ、そして子育てをしながら働き続けるための社会全体のサポート体制の不足。これらの根本的な課題を、単に「eバウチャー」のようなツールで解決できると考えるのは、あまりにも安易である。
真に女性が活躍できる社会を築くためには、表層的な支援策に留まらず、社会全体の意識改革と、それに伴う制度的な裏付けが不可欠である。例えば、男性の育児参加を促進するための柔軟な働き方の導入、保育サービスの拡充、そして学校教育におけるジェンダー平等の思想の徹底など、地道で、しかし着実な取り組みこそが求められている。
今回の国際連携を、あくまで女性活躍推進の一つの側面に過ぎないと冷静に位置づけ、国内における足元の課題にこそ、より一層の注力と、実効性のある政策を期待したい。国際社会との連携も重要だが、まずは自分たちの足元をしっかりと見つめ、国内の女性たちが直面する現実的な困難を、一つ一つ解消していくことこそが、真の「エンパワメント」に繋がる道なのではないだろうか。
NEC、国連人口基金(UNFPA)と協力して「eバウチャー」で女性の健康と権利をサポート！,日本電気
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