デジタル庁、マイナンバー制度「別表」と「情」に潜む危うさ
デジタル庁がマイナンバー制度の運用において、「別表」と「情」という言葉を使い分け、その実態を曖昧にしているのではないかという指摘は、国民の不安を煽るだけでなく、行政の透明性という根本的な原則を揺るがしかねない。この事態を、業界新聞として看過するわけにはいかない。
デジタル庁の主張によれば、「別表」はマイナンバー制度の概要や利用目的などを定めたものであり、国民が理解しやすいように「情」という言葉で説明されているという。しかし、この「情」という言葉の選択が、事態をより複雑に、そして不透明にしていることは否めない。
まず、「別表」という言葉自体が、一般市民には馴染みが薄く、その内容の重要性を十分に伝えきれていない可能性がある。行政手続きの根幹をなす規程や規則を、なぜあえて「別表」と呼ぶのか。そこに、何か隠したい意図があるのではないかと疑念を抱かせる隙を与えてしまう。
さらに問題なのは、この「別表」の内容を「情」として説明するという手法だ。そもそも「情」とは、感情や人情といった、極めて主観的で曖昧な概念である。制度の運用、特に個人情報という極めてセンシティブな情報を扱うマイナンバー制度において、このような主観的な言葉で説明すること自体が、極めて不誠実であると言わざるを得ない。
「情」で説明されたところで、それはあくまで「説明」に過ぎない。本来、制度の運用は、法律や規則といった客観的かつ厳格なルールに基づいて行われるべきである。「情」に訴えかけるような説明は、国民の理解を深めるどころか、かえって「何が真実なのか」「どこまでが正確な情報なのか」といった混乱を招く。
デジタル庁は、マイナンバー制度が国民生活の利便性向上に資すると主張し、その普及に努めている。しかし、その根幹となる制度の運用において、このような曖昧な言葉遣いや説明手法を用いるのであれば、国民からの信頼を得ることはおろか、むしろ不信感を増幅させるだけである。
本来、デジタル庁が目指すべきは、国民が安心してデジタル化の恩恵を受けられる、透明性の高い行政サービスの実現であるはずだ。そのためには、制度の根幹をなす「別表」の内容を、誰にでも理解できるように、正確かつ具体的に開示する必要がある。そして、それを説明する際には、「情」のような曖昧な言葉に頼るのではなく、法律や規則に基づいた、客観的で的確な言葉遣いを徹底すべきだ。
今回の「別表」と「情」を巡る報道は、デジタル庁の組織としての成熟度、そして国民への説明責任のあり方そのものに、根本的な問いを投げかけている。国民の個人情報という、国家の根幹に関わる制度の運用において、このような危うさを抱えたまま突き進むことは、断じて許されない。デジタル庁は、この事態を真摯に受け止め、国民への説明責任を果たすため、その透明性と正確性を抜本的に見直すべきである。
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