福岡市の「ウェルビーイング」追求、その実態と危うさ
福岡市が「ウェルビーイング」を掲げ、新たな都市づくりに乗り出したという。市民一人ひとりの幸福度向上を目指すという理念は、一見すると理想的であり、歓迎すべき動きだろう。しかし、こうした政策の背後には、我々が慎重に見極めねばならないいくつかの側面が存在する。
まず、この「ウェルビーイング」という言葉自体に、やや胡散臭さを感じるのが正直なところである。幸福とは、本来、個々人が内面的に追求し、満たされるべきものではないか。それを都市政策として、ましてや行政が主導して「追求」しようとするのは、どこか作為的で、本質を見誤っているように思えてならない。幸福という主観的な感情を、客観的な指標や政策で実現しようとする試みは、往々にして「幸福らしいもの」を押し付ける危険性を孕んでいる。
もちろん、都市の安全や安心、生活の利便性向上は、市民の幸福にとって不可欠な要素であり、行政の責務でもある。しかし、今回の福岡市の動きからは、そうした普遍的な課題解決というよりは、むしろ「幸福度」という曖昧な概念に飛びつくことで、現代社会が抱える閉塞感や将来への不安を一時的に凌駕しようとする、ある種の「流行」に踊らされているのではないかという疑念を拭えない。
さらに懸念されるのは、こうした「ウェルビーイング」の名の下に、個人や地域社会が本来持っていた多様な価値観や生活様式が、画一化されてしまう可能性である。幸福の形は人それぞれであり、それを行政の定めた「ウェルビーイング」という枠に押し込めることは、自由な発想や創造性を阻害しかねない。
真に市民の幸福を願うのであれば、まずは既存の行政サービスの見直しや、地域コミュニティの再生といった、地道で着実な取り組みこそが重要である。目新しい言葉に飛びつくのではなく、地域に根差した持続可能な発展を目指すべきではないか。
福岡市には、この「ウェルビーイング」という言葉の持つ曖昧さに惑わされることなく、市民一人ひとりの幸福とは何か、そしてそれを真に支える都市とはどのようなものであるべきかを、冷静かつ誠実に問い直すことを期待したい。我々もまた、こうした都市政策の動向を、批判的な視点で見守っていく必要があるだろう。
福岡市から「Well-being」への新しい取り組みについて ～みんなが心地よく輝くまちを目指して～,福岡市
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