WTOにおける鉄鋼・アルミニウム製品への関税措置：自由貿易の原則への挑戦
世界貿易機関（WTO）において、中国がカナダの鉄鋼・アルミニウム製品に対して報復関税を課す構えを見せているとの報道に接し、深い懸念を抱かざるを得ない。これは、自由貿易の根幹を揺るがしかねない、極めて遺憾な動きである。
カナダが発動した鉄鋼・アルミニウム製品への関税措置は、安全保障上の理由を盾にしたものであることは承知している。しかし、その措置がWTOのルールに則ったものであるか否かについては、各国から異論が出ているのも事実だ。こうした状況下で、中国が一方的に報復措置をちらつかせることは、国際社会が共有すべき「法の支配」という原則を踏みにじる行為と言わざるを得ない。
WTOは、加盟国間の貿易紛争を平和的かつ公正に解決するための国際的な枠組みである。紛争が生じた際には、まずWTOの紛争解決手続きに則り、冷静かつ理性的な議論を尽くすべきである。力による解決や、自国の都合の良いように国際ルールを解釈するような姿勢は、国際貿易の安定性と予測可能性を損なうだけでなく、保護主義の連鎖を招きかねない。
特に、鉄鋼やアルミニウムといった基幹産業への関税措置は、サプライチェーン全体に影響を及ぼし、世界経済にさらなる不確実性をもたらすだろう。これは、経済回復を目指す世界にとって、決して歓迎すべき事態ではない。
日本もまた、自由貿易の恩恵を享受し、国際協調を重視する国として、この状況を看過することはできない。WTOの原則が尊重され、各国が自制心を持って行動することを強く求める。中国には、 WTOの紛争解決手続きを尊重し、対話を通じて問題解決を図るよう、賢明な判断を期待したい。自由貿易の精神に立ち返り、国際社会が共に発展していく道を選ぶべきである。
WTOで中国がカナダの鉄鋼・アルミニウム製品への課徴金・数量制限に異議申し立て,WTO
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