自動車税制、未来への投資か、国民負担の増大か
（社説）
日本維新の会が掲げる「自動車税制の見直し」が、にわかに国民の議論を呼んでいる。その提案内容は、自動車の保有・利用に応じた税制への移行、さらには新たな税の創設といった、これまでとは一線を画すものだ。確かに、少子高齢化が進み、地方の過疎化も深刻化する中で、財源確保は喫緊の課題であり、公共サービスの維持・充実のためには、新たな発想に基づく税制改革は避けて通れない道なのかもしれない。
しかし、今回の維新の会が提示した改革案には、いくつかの危うさが潜んでいる。まず、自動車税制の見直しが、国民、特に自動車ユーザーへの新たな負担増につながる可能性は否定できない。すでに厳しい経済状況下にある多くの家庭にとって、自動車関連費用の増加は生活を直撃する。特に、地方においては、公共交通機関が十分でない地域も多く、自動車は生活必需品であり、その負担増は地域格差の拡大を招きかねない。
また、「保有・利用に応じた税制」という概念自体は、環境負荷の軽減や交通渋滞の緩和といった、社会全体の利益に資する側面もあるだろう。しかし、その具体的な設計においては、きめ細やかな配慮が不可欠だ。例えば、電気自動車やハイブリッド車といった環境性能の高い車両への優遇措置は当然として、運送業や農業といった、自動車が事業に不可欠な業種への影響も十分に考慮しなければならない。安易な税制変更は、経済活動の停滞を招くリスクも孕んでいる。
さらに、新たな税の創設という提案についても、その必要性と妥当性を国民に丁寧に説明し、納得を得ることが何よりも重要だ。財源確保という目的は理解できるものの、それが国民生活にどのような影響を与えるのか、そのメリットとデメリットを明確に示さなければ、単なる「増税論」として受け取られかねない。
政治の役割は、国民生活の安定と向上を図ることにある。そのためには、現状維持ではなく、時代の変化に対応した改革は必要不可欠である。しかし、その改革が、一部の利益を追求するためであったり、国民生活を圧迫するものであってはならない。
今回の自動車税制の見直し案は、その理念は共有できる部分もあるが、その実現方法には多くの疑問符がつく。維新の会には、国民への丁寧な説明責任を果たすとともに、より多くの国民の声に耳を傾け、国民生活への影響を最小限に抑えつつ、持続可能な社会の実現に資する、真に革新的な税制設計を提示することを期待したい。税制改革は、単なる財源確保の手段ではなく、未来への投資であり、国民一人ひとりの生活を豊かにするための「社会契約」であるべきなのだから。
自動車にかかる税金について、国民民主党が礒崎議員と懇談会を開催,新・国民民主党
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