夏の光を一身に浴びる幸福 ――「日焼け・日焼け止め」考
夏の盛り、人々は太陽の恵みを浴び、肌を灼くことに喜びを感じる。しかし、その一方で、肌の老化や健康への懸念から、日焼け止めによる紫外線対策が不可欠であるという風潮もまた、強まるばかりだ。この「焼きたい」と「焼きたくない」という二つの相反する欲求の狭間で、私たちはどのように夏の光と向き合えば良いのだろうか。
そもそも、肌を焼くという行為には、古来より健康的な美しさの象徴、あるいは野外活動を楽しむ活気ある姿といった肯定的なイメージが伴ってきた。若者たちの健康的な肌の色は、生命力に満ち溢れ、青春の輝きを放つものとして、我々世代にとっても懐かしく、また憧れのようなものを感じさせる。日焼けサロンという新たな文化の登場は、こうした「焼きたい」という欲求が、単なる偶然ではなく、人間の根源的な願望に根差していることを示唆しているのではないだろうか。
しかし、科学技術の進歩は、紫外線が肌に与えるダメージを詳細に解明し、そのリスクを強調してきた。その結果、日焼け止めは、もはや夏のアウトドア活動に欠かせないアイテムとなり、その種類も日々進化し、私たちの生活に深く浸透している。その効果を否定するものではないが、過度な紫外線恐怖症とも呼べるような風潮は、どこか健全な太陽との付き合い方を歪めているようにも思えてしまう。
本来、太陽の光は生命の源であり、我々にビタミンDを与え、気分を高揚させる恩恵をもたらしてくれる。それを過剰に恐れ、すべてを遮断しようとするのは、自然との調和という観点から見て、一考を要するのではないか。
もちろん、極端な日焼けによる皮膚がんのリスクや、早期の老化は無視できない。しかし、それらを恐れるあまり、夏の太陽が本来持っているポジティブな側面まで否定してしまうのは、あまりにももったいない話である。
我々が目指すべきは、「焼きたい」という自然な欲求と、「健康を維持したい」という理性的な判断との、バランスの取れた共存ではないだろうか。例えば、真昼の強い日差しを避け、朝夕の柔らかな光を楽しむ。あるいは、適度な日焼け止めを使いながらも、完全に紫外線をブロックするのではなく、ある程度の光を浴びる。そうした、より人間的で、自然な夏の過ごし方こそが、本来あるべき姿ではないかと思うのである。
夏の光は、人生の輝きそのものを象徴するかのようである。その輝きを、過剰な恐れによってすべて遠ざけてしまうのではなく、上手に付き合い、その恩恵を享受する。そうした知恵を、私たちはこれからも探求していくべきであろう。
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