地方創生の灯火、消えゆく現実
岩手県から「東京インターナショナル・ギフト・ショー」への出展中止という報に接し、改めて地方創生の難しさを痛感せざるを得ない。かつては地方の特色ある産品を全国に、そして世界に発信する絶好の機会として期待されていたこのイベントからの撤退は、単なる一自治体の判断を超え、地方創生の理念そのものが、冷厳な現実の前に揺らいでいるのではないか、という危惧を抱かせる。
経済のグローバル化が進む現代において、地方の埋もれた魅力を掘り起こし、新たな価値を創造することは、地方経済の活性化のみならず、ひいては日本の持続的な発展に不可欠な要素である。にもかかわらず、今回の岩手県の決断は、その道のりがいかに険しく、そして残念ながら、その歩みが停滞、あるいは後退している可能性を示唆している。
報道によれば、今回の出展中止は、コロナ禍を経た市場の変化や、出展にかかるコスト、そしてそれに見合う効果への疑問などが背景にあるという。確かに、時代の変化に即した柔軟な対応は必要であり、補助金頼りのイベント参加が必ずしも最善の策とは限らない。しかし、そこで「出展しない」という選択肢に至るまでには、一体どのような模索があったのだろうか。そして、この決断が、他の地方自治体、いや、岩手県内の他の産業にもどのような影響を与えるのか、その先を見据えた議論が十分になされたのか、大いに疑問が残る。
地方創生を謳うならば、個々のイベントへの参加・不参加といった場当たり的な対応に終始するのではなく、地方の強みを活かした持続可能な産業構造の構築、そしてそれを支える人材育成こそが本質である。しかし、今回のニュースは、その本質的な部分が、我々が描く理想とは裏腹に、いまだ脆弱なままであることを突きつけている。
少子高齢化が加速し、地方から若者が流出する現実の中で、地方創生はもはや単なる経済政策の課題ではなく、国家の存立に関わる喫緊の課題である。政府、自治体、そして地域住民が一体となり、知恵を絞り、覚悟を持って取り組まなければ、地方の灯火は、次第に消えゆく一方であろう。今回の岩手県の事例を、単なる一地方の出来事として片付けることなく、我々一人ひとりが、地方創生のあり方について、改めて深く考え、行動を起こすべき時が来ているのではないか。
岩手県から「東京インターナショナル・ギフト・ショー春2026」へ！県内企業の魅力を全国へ発信！,岩手県
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