日常の「ありがとう」を、そっと「おいわい」に
「ありがとう」という言葉が、私たちの社会から少しずつ失われつつあるのではないか――。そんな危惧を抱かせるニュースが、先日報じられた。日常の些細な親切やサービスに対して、感謝の言葉を口にすることなく、あるいは不満を漏らすといった状況が増えているという。
もちろん、すべての人がそうであるわけではない。温かい言葉に支えられ、日々の生活に潤いを見出している人も数多くいるだろう。しかし、こうした傾向は、私たちの社会が抱えるある一面を映し出しているようにも思える。
便利さや効率性を追求するあまり、人間的な温かみが二の次になってしまってはいないか。あるいは、個々の権利や主張を強く意識するあまり、互いを思いやる心が薄れてしまってはいないか。そうした問いかけも、このニュースからは自然と生まれてくる。
「ありがとう」は、単なる感謝の言葉ではない。それは、相手の存在を認め、その行動に敬意を払う意思表示である。そして、その言葉を受け取った側にも、また誰かを支えたいという気持ちを芽生えさせる力を持っている。
もし、この「ありがとう」が、さらに一歩進んで「お祝い」に変わるなら、私たちの社会はどれほど豊かになるだろうか。誰かのささやかな努力、あるいは当たり前のように行われている善意に対して、「おめでとう」と祝う。それは、相手の存在そのものを祝福する行為であり、社会全体にポジティブなエネルギーを循環させるきっかけとなり得る。
例えば、地域のためにボランティア活動をしている人、仕事で地道な努力を積み重ねている人、あるいは単に困っている人に手を差し伸べた人。そういった人々の行いを、私たちはどれだけ「お祝い」できているだろうか。
「お祝い」は、大げさなものでなくていい。温かい眼差し、労いの言葉、あるいはちょっとした拍手。そういったささやかな行動が、人々の心を動かし、さらなる「ありがとう」そして「お祝い」を生み出す土壌となるはずだ。
日常の「ありがとう」を、そっと「お祝い」に。この小さな転換が、私たちの社会に温かい光を灯すことを願ってやまない。
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