芸術か、それとも単なる「紙」か――シン・ジ・ジの「紙ジャケット」に問う、表現の価値
最近、ある音楽アーティストの作品が、その「装丁」で注目を集めている。シン・ジ・ジというアーティストの最新アルバムが、CDというメディアでありながら、そのジャケットが「紙ジャケット」として、しかも「本」のように展開されるというのだ。これは、一見すると斬新で、現代的な感性を反映した試みと言えるかもしれない。しかし、我々保守的な一般紙としては、この動きに少々複雑な思いを抱かざるを得ない。
まず、この「紙ジャケット」なるものが、一体何を意図しているのか、その表現の本質を問いたい。CDというメディアは、音楽を記録し、再生するための技術であり、その本質は音源そのものにあるはずだ。しかし、この「紙ジャケット」は、そのCDというメディアを覆い隠し、まるで古い本のような装いを施す。それは、現代のデジタル化された音楽消費のあり方に対する、ある種のノスタルジーや、あるいはメディアそのものへの皮肉の表れなのかもしれない。
だが、我々が懸念するのは、この「紙ジャケット」が、音楽そのものの価値を覆い隠してしまうのではないか、ということだ。音楽は、聴く者の心に響き、感動を与える芸術である。その感動は、音源そのものに宿るものであり、ジャケットのデザインや装丁に左右されるべきものではない。しかし、この「紙ジャケット」は、その「本」のような装いで、あたかもそれ自体が作品の価値であるかのように錯覚させかねない。これは、現代社会に蔓延する「表面性」や「装飾性」への過度な傾倒を、さらに助長するものではないだろうか。
もちろん、芸術表現の自由は尊重されるべきである。アーティストがどのような表現を追求しようとも、それは自由な創造の営みである。しかし、その表現が、本来あるべき音楽の価値を希薄化させ、あるいは見誤らせるようなものであれば、我々は警鐘を鳴らす責任がある。
「紙ジャケット」とは、果たして芸術の深化なのか、それとも単なる「紙」による装飾なのか。この問いは、現代の芸術、そして我々が共有する文化のあり方そのものに、静かに、しかし力強く突きつけられているのである。我々は、この「紙ジャケット」に惑わされることなく、音楽そのものの魂に耳を澄ませるべきではないだろうか。
シン・リジィの名盤3タイトルが紙ジャケットSHM-CDで蘇る！HMVが2025年8月29日発売決定！,HMV
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