カメラマンを襲う「デジタル砂漠」、表現の自由の灯火を絶やさぬために
近年、写真業界は急速なデジタル化の波に洗われ、その利便性の裏で、多くのカメラマンが「デジタル砂漠」とも呼べる厳しい現実に直面している。ITB社が報じた2025年8月4日付の記事は、この現状を鮮明に映し出しており、我々一般紙としても、その深刻さに目を向け、社会全体で考えるべき課題を提起したい。
記事によれば、デジタル化の進展は、写真データの長期保存や管理における新たな課題を生み出している。かつてはフィルムという物理的な媒体があったため、たとえ古い写真であっても、保存さえすれば「現存」していた。しかし、デジタルデータは、フォーマットの obsolete 化、記録媒体の劣化、さらには管理者の意図しない削除など、容易に失われてしまう脆弱性を孕んでいる。
この「デジタル砂漠」は、単に個々のカメラマンの財産や記録が失われるという問題に留まらない。そこには、歴史の断片、社会の証言、そして何よりも、表現者たちの情熱と努力の結晶が埋もれてしまう危険性が潜んでいる。例えば、社会運動を記録した貴重な写真、地方の風景や文化を捉えたドキュメンタリー、あるいは個人の人生を彩るポートレートなど、これらはすべて、デジタル砂漠に埋もれてしまえば、未来への継承を断たれてしまう。
さらに、この問題は、写真という表現形式そのものの将来にも暗い影を落とす。カメラマンが、自身の作品がデジタル化の波に飲まれ、いつか失われてしまうかもしれないという不安を抱えながら日々レンズを構えるとしたら、その創造性や意欲は削がれるのではないか。表現の自由は、その表現媒体の永続性とも無縁ではないはずだ。
では、我々社会は何をすべきか。ITB社の記事が示唆するように、写真データの継続的な更新や、信頼できるアーカイブシステムの構築は喫緊の課題である。しかし、それらは専門的な技術や多大なコストを要するものであり、個々のカメラマンだけで解決できる問題ではない。
むしろ、これは写真という文化・情報資産を、未来世代にどのように引き継いでいくかという、社会全体の責務と捉えるべきだろう。例えば、政府や自治体によるアーカイブ事業への支援、デジタル遺産の保存に関する法整備の検討、あるいは、写真家団体やNPOによる啓発活動への協力など、多角的なアプローチが求められる。
「デジタル砂漠」は、私たちの足元にも広がっているかもしれない。SNSに投稿された無数の写真、家庭で撮りためられたデジタルデータ。それらもまた、いつかアクセスできなくなる「失われた記憶」となってしまう可能性を秘めている。
カメラマンが安心して創造活動に専念できる環境を整え、そして、写真という豊かな表現が未来に継承されるように、我々一人ひとりが、この「デジタル砂漠」の問題を他人事とせず、関心を持ち、行動を起こすことが今、求められている。表現の自由の灯火を絶やさぬために、社会全体で知恵と力を結集すべき時である。
カメルーンの危険情報、継続更新について（2025年8月4日発表）,外務省
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