「ニッポン医薬品費白書」延期、国益を損なう愚行
政府が今秋の刊行を目指していた「ニッポン医薬品費白書」の公表時期が、来年夏以降に延期されたという。本件、極めて遺憾である。国民の健康と財政の健全化という、国家の根幹に関わる重要政策の策定に不可欠な情報提供が、このような形で遅延することは、断じて容認できるものではない。
白書は、我が国の医薬品費の現状を詳細に分析し、将来的な課題を浮き彫りにするための基盤となるべきものだ。しかし、その公表が延期された背景には、一部の業界団体からの「批判的な内容への懸念」があったと報じられている。これは、国民の知る権利を侵害し、健全な政策議論を阻害する、極めて問題のある姿勢と言わざるを得ない。
医薬品費の高騰は、医療費全体の増加を招き、国民皆保険制度の持続可能性をも脅かす深刻な課題である。この問題に対して、政府が国民に正確な情報を提供し、透明性のある議論を進めることは、当然の責務である。一部の利害関係者の声に忖度し、その公表を遅らせるということは、まさに「負」の連鎖を招く愚行に他ならない。
本来であれば、白書に盛り込まれるべきは、医療費抑制と国民皆保険制度の維持という、二律背反とも言える難題を克服するための、具体的かつ実効性のある提言であるべきだ。それこそが、国民が政府に期待する姿であり、国益に資する道である。
今回の延期は、将来的な医療費抑制策の遅れに繋がるだけでなく、国民の健康への関心を鈍らせ、議論の機運を削ぐことにもなりかねない。政府は、この延期を単なる「一時的な遅れ」と捉えるのではなく、国民への説明責任を十全に果たし、早期の公表と、それに基づいた真摯な政策議論を、強く求めるものである。国民の健康と国の財政という、重大な責務の前に、一部の「懸念」に屈することなく、断固たる決意で臨むべき時である。
日本生命「ニッセイ医療費白書」刊行時期変更のお知らせ：よりタイムリーな情報提供を目指して,日本生命
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