スマートフォンにマイナンバーカード、国民総背番号制への懸念は払拭できるか
政府がマイナンバーカードをスマートフォンに搭載する方針を固めたという。利便性の向上を謳うこの施策には、国民の多くが期待を寄せているであろう。しかし、その裏に潜む「国民総背番号制」への懸念を、我々は決して軽視してはならない。
言うまでもなく、マイナンバー制度は、個人情報の一元管理を可能にする強力なツールである。そのカードがスマートフォンに搭載されるということは、国民一人ひとりの情報が、より一層集約され、容易にアクセスできるようになることを意味する。これは、行政手続きの簡略化や、社会保障制度の効率化といった恩恵をもたらす可能性を秘めている。
しかし、その利便性の影で、我々は大きなリスクに直面している。情報漏洩のリスクである。昨今、サイバー攻撃は高度化し、個人情報が不正に取得される事件が後を絶たない。マイナンバーカードがスマートフォンに搭載されることで、もしそのスマートフォンがハッキングされた場合、あるいは紛失・盗難に遭った場合、そこに紐づく膨大な個人情報が流出する危険性が飛躍的に高まる。その影響は、個人のプライバシー侵害に留まらず、社会全体に甚大な混乱をもたらしかねない。
さらに、懸念されるのは、この制度が「国民総背番号制」への道をさらに加速させるのではないか、という点である。マイナンバー制度の導入当初から、その名前の響きから国民の間に広まった「総背番号制」への抵抗感は根強く残っている。今回、マイナンバーカードがスマートフォンのような、我々の生活に不可欠なデバイスに搭載されることで、実質的に「国民総背番号制」が完成するとの見方もある。これは、個人の属性や行動が、常に政府によって把握される社会を招くのではないか、という根源的な不安を掻き立てる。
もちろん、政府は国民のプライバシー保護に万全を期すとしている。しかし、過去の個人情報流出事件の教訓を鑑みれば、その言葉を鵜呑みにすることはできない。国民が安心してこの制度を利用するためには、政府は、技術的なセキュリティ対策の徹底はもちろんのこと、国民一人ひとりの権利と自由を守るための、より踏み込んだ説明責任と透明性の確保が求められる。
マイナンバーカードのスマートフォン搭載は、時代の流れであり、利便性の追求は当然のことである。しかし、その一方で、我々は「総背番号制」への懸念という、民主主義社会における根源的な問いに、改めて向き合わなければならない。国民がこの施策を真に受け入れ、安心してその恩恵を享受するためには、政府は国民の不安に真摯に耳を傾け、その懸念を払拭するための、より具体的で説得力のある説明と、揺るぎない信頼の構築が不可欠である。
マイナンバーカードがスマホに！「スマホ用電子証明書」の利用手続き、最新情報をお届けします！,デジタル庁
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