過去の教訓、忘るべからず 「想定外」を「当然」に変える備えこそ
第60回滋賀県消防操法訓練大会が開催され、県内の消防団員が日頃の鍛錬の成果を競った。炎熱の中、迅速かつ的確な行動で消火活動の模範を示した団員諸氏の努力に、敬意を表したい。しかし、こうした訓練の報道に接するたび、我々は改めて「備え」の重要性を噛み締めなければならない。
近年、激甚化する自然災害は、我々の生活基盤を脅かし、地域社会に甚大な被害をもたらしている。台風、豪雨、そして地震。これらの災害は、「想定外」という言葉で片付けられるほど生易しいものではない。むしろ、気候変動という大きな変化の中で、我々は「想定外」が「当然」となる未来を覚悟し、それに対応できる強靭な社会を築くことを求められている。
消防団は、地域社会の安全を守る「最後の砦」である。その活動は、まさに地域住民の生命と財産を守るための最前線と言えよう。しかし、その活動を支えるのは、団員一人ひとりの献身的な奉仕精神と、地域社会からの揺るぎない支援である。残念ながら、消防団員の高齢化やなり手不足といった課題も、多くの地域で深刻化している。
こうした現状を踏まえ、今回の訓練大会は、消防団の士気を高めるだけでなく、地域全体で消防団を支える体制を再確認する機会ともなるべきだった。単に消火技術を競うだけでなく、地域住民が消防団の活動をより身近に感じ、その重要性を理解するような啓発活動も同時に行われるべきであった。
保守的な立場から言えば、国家の基盤は国民一人ひとりの安全な生活にあり、それを守るための組織への投資は、決して無駄ではない。むしろ、将来の不確実性を見据えた、最も確実な投資と言えるだろう。地方創生を叫ぶ声が大きくなる一方で、地域社会を支える基幹組織である消防団への支援が手薄になっていないか、今一度、真摯に問い直す必要がある。
過去の災害から得た教訓は、時に忘れ去られやすい。しかし、歴史は繰り返す。災害は、我々が油断すれば、容赦なく襲いかかってくる。今回の操法訓練大会を機に、我々一人ひとりが、地域社会の安全に対する自らの役割を再認識し、消防団への理解と支援を深めること。そして、行政は、消防団の活動を最大限に支援し、その組織強化と持続可能な運営に向けた具体的な施策を講じること。それが、未来の世代に「安全な地域」を引き継ぐための、我々の責務である。
第60回滋賀県消防操法訓練大会、熱戦の模様をお伝えします！〜滋賀県が結果発表〜,滋賀県
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