活性化への「要請」、揺れる地方創生
国土交通・観光常任委員長から、活発な「要請」があったというニュースに触れた。地方創生に向けた取り組みへの、ある種の危機感の表れなのかもしれない。しかし、その「要請」が具体的に何を意味し、どのような効果を生み出すのか。現時点では、その輪郭すら曖昧模糊としている。
地方創生という言葉が踊り始めて久しい。少子高齢化、人口減少に歯止めをかけ、地域経済を活性化させようという、その志は誰しもが共有するところだろう。しかし、現実は厳しい。画一的な政策では、地域固有の魅力や課題に対応しきれない。補助金漬けの箱物行政では、持続可能な発展は望めない。財源の確保、人材の育成、そして何よりも地域住民の主体的な参画。これらが欠けては、どんな「要請」も空虚な響きに終わってしまう。
委員長の「要請」は、おそらく、これまでの施策が十分な成果を上げていないことへの焦り、あるいは、事態の深刻さを訴えたいという思いの表れなのだろう。だが、本来、地方創生は中央政府が指示し、地方が従うという関係性だけでは成り立たない。地域が自らの頭で考え、自らの手で未来を切り開いていく。そのための環境整備こそが、中央政府に求められる役割ではないだろうか。
例えば、地域資源の掘り起こしと、それを活かした新たな産業の創出。観光資源の磨き上げはもちろんのこと、地域に眠る特産品や伝統技術に光を当て、付加価値の高い商品やサービスへと転換させていく。そのためには、専門知識を持つ人材の育成や、産学官連携による研究開発支援も不可欠だ。また、若者が地域に定着し、活躍できるような魅力的な雇用機会の創出も急務である。
もちろん、財政的な支援も重要だ。しかし、それは単なる「ばらまき」であってはならない。地域の実情に即した、きめ細やかな支援策が求められる。たとえば、地域活性化の担い手となる NPO やベンチャー企業への資金援助や、地方大学との連携による地域課題解決型プロジェクトへの投資など、より本質的な部分への支援を拡充すべきだろう。
地方創生は、誰かが「要請」するから行うものではない。地域に住む人々が、自分たちの暮らしをより良くしたい、自分たちの故郷を次世代に引き継いでいきたい、という強い思いから生まれるべき運動である。政府には、その思いを後押しする制度設計と、柔軟な対応が求められている。
委員長の「要請」を、単なる一時的なかけ声として終わらせず、地方創生のあり方を根本から見直す契機としたい。そして、地域が主体となり、多様な主体が連携することで、真に活力ある地域社会を築き上げていく。そんな未来への一歩を、今、静かに、しかし力強く踏み出す時ではないだろうか。
国土交通・観光常任委員長、活発な要請活動を実施！～ 未来への架け橋を築く、地方からの声 ～,全国知事会
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