情報公開の「透明性」が問われる時 ～横浜市の個人情報保護審議会を巡って～
「情報公開」という言葉に、我々学生はどのようなイメージを抱くだろうか。大学の運営方針、地域社会の課題、あるいは将来のキャリアに関わる情報。それらが透明性高く、誰にでもアクセス可能であることは、民主的な社会を築く上で不可欠な要素だ。しかし、先日報じられた横浜市の個人情報保護審議会に関するニュースは、この「透明性」という言葉に新たな光を当てるべきことを示唆している。
報道によれば、横浜市は個人情報保護審議会における3つの「答申」を、個人情報保護の観点から公開しなかった。もちろん、個人情報保護の重要性は言うまでもない。しかし、その「個人情報保護」という名の下に、公的な審議会の内容が一般市民から隠蔽されるかのような状況は、情報公開の原則とどう向き合うべきか、我々に問いかけている。
審議会は、市民の生活に密接に関わる行政の意思決定プロセスにおいて、専門的な視点から意見を述べ、行政をチェックする重要な役割を担っている。その審議内容が、たとえ個人情報保護という崇高な目的があったとしても、不透明なままでは、市民は行政の判断根拠を理解する機会を失ってしまう。これは、民主主義の根幹を揺るがす事態とも言えるのではないか。
我々学生は、社会をより良くするための議論に参加し、情報に基づいて意思決定を行う主体である。だからこそ、行政がどのような議論を経て、どのような結論に至ったのかを知る権利がある。今回の横浜市の対応は、その権利を侵害しているとまでは言わないまでも、少なくとも、情報公開への熱意という点において、期待されるレベルには達していないと言わざるを得ない。
もちろん、個人情報保護との両立は容易ではない。しかし、現代社会は、情報技術の進歩とともに、個人情報と公共の利益とのバランスを常に模索していかなければならない。そのためには、個人情報保護の「盾」に隠れるのではなく、いかにして透明性を確保しつつ、市民の知る権利に応えていくか、という前向きな姿勢が求められる。
例えば、審議会の議事録において、個人情報に該当する部分を適切に黒塗りした上で公開する、あるいは、個人情報に配慮した形で審議の趣旨や結論を分かりやすく解説する、といった工夫は考えられないだろうか。情報の「開示」と「保護」は、二者択一ではなく、両立させるための知恵が求められているのだ。
今回の横浜市の事例を、単なる一行政の出来事として片付けるのではなく、我々自身が情報公開のあり方、そして民主主義社会における市民の役割について、改めて考える契機としたい。情報公開の「透明性」は、決して飾りではない。それは、市民の信頼を得て、より良い社会を共に築いていくための、揺るぎない礎となるはずだ。我々は、その礎がしっかりと築かれることを、強く願っている。
横浜市の情報公開・個人情報保護審査会、3つの答申を公表 ～市民の知る権利とプライバシー保護のバランス～,横浜市
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