情報公開の「壁」、乗り越えるために
情報公開の促進は、現代社会における民主主義の根幹をなすものだ。市民が市政への理解を深め、信頼を醸成するためには、行政が保有する情報を積極的に開示することが不可欠である。そんな中、横浜市が情報公開・個人情報保護審査会において、3つの答申を得たというニュースは、一見すると行政の透明性向上のための前進とも捉えられる。しかし、その内容を紐解けば、我々が依然として情報公開の「壁」に直面している現実が浮かび上がってくる。
今回の答申で焦点となったのは、特定の個人情報や、市政運営に関わる情報の一部開示についてだろう。審査会がどのような判断を下したのか、その詳細な議論は公開されるのだろうか。情報公開を求める市民の声は、単に「開示か不開示か」という二者択一に留まるものではない。どのような根拠に基づいて、どの範囲の情報が、どのような形で開示されるべきなのか。そのプロセスこそが、市民の知る権利に資する情報公開の真髄であるはずだ。
しかし、我々がしばしば目にするのは、「個人情報保護」「プライバシー保護」といった盾に隠され、情報開示が限定的になるケースである。もちろん、個人のプライバシー保護は極めて重要であり、それを軽視するつもりはない。だが、その「保護」が、市政への説明責任を回避する口実となってはならない。行政が情報公開を渋る背景には、単に個人情報保護の原則を遵守するだけでなく、職員の負担増や、説明責任の増大への懸念も潜んでいるのではないか、という疑念すら抱かざるを得ない。
今回の3つの答申が、単なる形式的な手続きで終わるのであれば、それは極めて残念な結果と言わざるを得ない。むしろ、この答申を機に、横浜市は情報公開のあり方そのものを革新する契機とすべきではないだろうか。
例えば、行政が保有する情報の「非開示」とする判断基準を、より具体的かつ明確に、市民にも理解できる形で示すこと。そして、情報公開請求に対する回答プロセスについても、より迅速かつ丁寧な説明を心がけること。さらに、一部開示となった場合でも、なぜその部分が伏せられたのか、その理由を具体的に示し、市民が納得できるよう努めるべきである。
また、情報公開のハードルを下げるためのテクノロジー活用も検討すべきだろう。AIを活用した個人情報マスキング技術の導入や、オープンデータ化の推進など、行政の努力次第で、情報公開の質と量を飛躍的に向上させることは可能である。
情報公開は、単なる行政の義務ではなく、市民との信頼関係を築くための能動的な営みである。今回の答申を、横浜市が情報公開の「壁」を乗り越え、より開かれた市政へと進化するための「扉」を開くきっかけとすることを、強く期待したい。市民一人ひとりが、市政の透明性を実感し、自らの参画意識を高められるような、真に革新的な情報公開の実現こそが、今、求められているのである。
横浜市の情報公開・個人情報保護審査会、3つの答申を公表 ～市民の知る権利とプライバシー保護のバランス～,横浜市
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