EUの「公共調達市場への参入促進」：自由貿易の原則か、保護主義の足音か
欧州連合（EU）が、域外企業による公共調達市場への参入を促進する方針を打ち出したというニュースは、国際貿易のあり方を考える上で、無視できない示唆に富んでいる。自由貿易の原則に則り、より公正で開かれた市場を目指すというEUの姿勢は、原則論としては賛同できる。しかし、その裏に潜むかもしれない保護主義的な意図、そしてそれがもたらすであろう国際社会への影響について、慎重な検証が必要であろう。
EUが掲げる「公共調達市場への参入促進」は、表向きには「より多くの競争を促し、税金の有効活用を図る」という、国民生活にも資する合理的な目的を有しているように見える。これまでのEUの公共調達市場は、域内企業に有利な規制が存在し、事実上の保護主義が敷かれているとの指摘も少なくなかった。そうした状況を是正し、域外からの参入を促すことは、EU自身の経済活性化に繋がる可能性を秘めている。
しかし、ここで目を凝らして見なければならないのは、EUがどのような基準で「参入促進」を行うのか、という点である。もし、EUが自国の産業保護や、政治的な思惑から、特定の国や地域からの参入を事実上排除するような基準を設けるのであれば、それは自由貿易の精神に反する行為と言わざるを得ない。特に、昨今の国際情勢の不安定さを鑑みれば、経済安全保障の観点からの慎重な姿勢も理解できなくはないが、それが過度な保護主義に繋がることは、断じて避けるべきである。
自由貿易は、相互の利益を追求し、経済発展を促進する強力なエンジンである。しかし、その恩恵を享受するためには、各国が公平な競争環境を維持し、保護主義的な政策に陥らないよう、常に自戒する必要がある。EUが今回打ち出した方針が、真に公正で開かれた国際調達市場の実現に貢献するのか、それとも新たな貿易障壁を生み出すことになるのか。今後のEUの具体的な政策展開を、厳しく注視していく必要があるだろう。
日本の立場としては、EUの動向を注視しつつ、自国の産業競争力を高める努力を怠ってはならない。同時に、WTO（世界貿易機関）などの国際的な枠組みを活用し、自由貿易の原則が守られるよう、積極的に働きかけていくべきである。国際社会は、複雑な利害関係の絡み合いの中で成り立っている。 EUの「公共調達市場への参入促進」は、その複雑さを浮き彫りにする好機であり、我々はこの機会を活かして、より強く、より公正な国際貿易秩序の構築を目指すべきである。
欧州連合（EU）、国際公共調達市場への参入を促進する新制度「IMPI」を初導入！,economie.gouv.fr
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