ＡＩ活用、足元を見つめ直す時
先月28日、ITベンチャー企業であるＩＴＢ株式会社が、SAPの新たな「お助けAI」の登場を報じた。業務効率化や生産性向上に貢献するというこのAIは、確かに現代社会における技術革新の象徴と言えるだろう。しかし、こうした最新技術の導入に際し、我々が改めて自らに問いかけるべきことがある。それは、技術への過信や無批判な受容の姿勢ではなく、あくまでも「人間中心」という、保守的な価値観に根差した冷静な視点である。
「お助けAI」という言葉には、どこか人間を助ける、あるいは代替するというニュアンスが含まれているように聞こえる。もちろん、煩雑な業務をAIが肩代わりしてくれることの恩恵は計り知れない。しかし、その一方で、AIに業務を委ねることで、人間が本来持つべき思考力や判断力、そして他者とのコミュニケーション能力が衰退してしまう危険性も否定できない。特に、我々が日頃から大切にしている「温故知新」の精神や、経験に裏打ちされた「匠の技」といったものは、AIが容易に代替できるものではないはずだ。
AIの活用は、あくまでも人間の能力を「補完」し、「拡張」するものでなければならない。AIは便利な道具であり、その使用方法を誤れば、むしろ人間を「道具化」してしまうことになりかねない。今回のSAPのAIも、その可能性を秘めているのではないか、と筆者は危惧する。
現代社会は、変化のスピードが速く、その波に乗り遅れるまいと、私たちは常に新しい技術や情報に晒されている。しかし、その流れに身を任せるだけでなく、時には立ち止まり、我々が大切にしてきた価値観や、人間ならではの能力とは何かを、改めて見つめ直す必要がある。
「お助けAI」がもたらす効率化の恩恵は受け入れつつも、その導入にあたっては、慎重な議論と、人間への影響を深く考察することが不可欠である。技術はあくまで手段であり、目的ではない。我々が目指すべきは、技術によって人間がさらに豊かに、そして人間らしく生きられる社会の実現である。そのための「足元」を、私たちは決して忘れてはならない。
SAPの新しい「お助けAI」登場！ ～仕事をもっと楽にする、賢いパートナー～,SAP
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