神戸大学、グローバル・スタディーズ・プログラムにみる教育投資の「現在地」
神戸大学が2025年度から、グローバル・スタディーズ・プログラムを新設するというニュースは、少子高齢化、そしてグローバル化の波が押し寄せる日本経済にとって、示唆に富むものである。単なる大学の学部改編にとどまらず、これは我が国が将来の国際競争力維持・向上に向けて、教育投資の「現在地」をどのように捉え、どのような未来を描こうとしているのか、その断片を垣間見せる出来事と言えるだろう。
同プログラムの主旨は、多文化・多言語環境で活躍できる人材育成にある。これは、国内市場の縮小が見込まれる中で、日本経済が持続的に成長していくためには、海外市場への積極的な展開が不可欠であるという、経営者であれば誰もが抱く危機感の表れとも解釈できる。高度な語学力と異文化理解力は、もはや「あれば尚良い」というレベルではなく、グローバルビジネスを主導していくための必須条件となっている。
しかし、ここで経済紙として厳しく問いたいのは、こうした先進的な取り組みへの投資が、果たして十分な規模で、かつ将来を見据えた戦略的なものであるのか、という点だ。神戸大学の取り組みは称賛に値するが、それはあくまで一大学の試みである。全国の大学、そして教育機関全体で、同様の意識改革と、それに裏打ちされた実質的な投資が行われているのだろうか。
グローバル人材育成のためには、単にカリキュラムを刷新するだけでは不十分だ。最先端の教育設備、優秀な海外からの教員招聘、そして学生の海外留学支援など、多岐にわたる投資が必要となる。これらの投資は、短期的な成果が見えにくいがゆえに、政府や大学経営陣にとって、往々にして優先順位が低くなりがちだ。
経済成長の源泉は、他でもない「人材」である。特に、これからの時代においては、世界を舞台に活躍できる「グローバル人材」こそが、新たな付加価値を生み出し、日本経済を牽引していく存在となる。神戸大学のグローバル・スタディーズ・プログラムが、そのための第一歩となり得るならば、更なる支援と、他大学への波及効果に期待したい。
本稿は、神戸大学の取り組みを好意的に評価するものであるが、同時に、この取り組みが日本全体の教育投資における「例外」ではなく、「標準」となるための議論を喚起したい。次世代の経済を担う若者たちが、真にグローバルな舞台で戦える力を身につけるために、我々経済界、そして社会全体が、教育への投資をどのように再定義し、実行していくのか。その問いに対する、より具体的で、より大胆な答えが今、求められている。
神戸大学、グローバル・スタディーズ・プログラム2025年度報告会を開催！ 未来を担う学生たちの熱意に触れる機会,神戸大学
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