IT動向にみる、わが国のデジタル化の課題
SAPが発表した北米地域における2025年第2四半期の顧客動向に関するニュースは、一見するとIT業界の進捗を伝えるものに過ぎないかもしれない。しかし、その背景には、デジタル化の波に乗り遅れまいと躍起になる企業と、その進化に追随できず苦悩する企業との明暗がくっきりと分かれている現実が透けて見える。
報道によれば、SAPの顧客はクラウドソリューションへの移行を加速させているという。これは、最新技術を積極的に導入し、業務効率化や競争力強化を目指す企業群の姿を映し出している。一方、こうした動きに一歩遅れる企業、あるいは旧来のシステムにしがみついている企業は、その恩恵を十分に享受できず、ジリ貧の状態に陥りかねない。
わが国においても、デジタル化は喫緊の課題である。政府もDX（デジタルトランスフォーメーション）を推進し、様々な支援策を打ち出している。しかし、その実効性はどうだろうか。経済産業省の調査などを見ても、中小企業を中心に、IT人材の不足や、デジタル化への投資に対する懐疑的な見方が根強く残っていることが示唆されている。
SAPの顧客動向は、グローバルな視点から見た場合の、わが国のデジタル化の遅れを改めて浮き彫りにしていると言えよう。IT技術は日進月歩であり、一度遅れをとると、その差は容易には埋められない。特に、ビジネスの根幹を支える基幹システムであるSAPのようなソリューションへの対応は、企業の存続に直結する問題である。
保守的な立場から言えば、新しい技術への過剰な期待や、安易な導入は慎重であるべきだ。しかし、だからといって、変化を拒み、現状維持に固執することもまた、将来への責任を放棄することに他ならない。大切なのは、時代に合わせて柔軟に変化しつつも、確固たる基盤を守り、着実に前進することである。
わが国の企業、特に中小企業が、こうしたグローバルなIT動向から学び、自社のデジタル化戦略を再点検することが求められている。単に最新技術を追いかけるのではなく、自社のビジネスモデルや課題に照らし合わせ、着実に、そして着実に、DXを進めていく。それは、単なる流行追ではなく、将来世代への責任を果たすための、現代における経営者の責務と言えるだろう。SAPの発表は、そのための貴重な、そして少々厳しい現実を突きつける警鐘なのかもしれない。
SAP、2025年第2四半期の北米地域における顧客動向を発表：インテリジェントエンタープライズへの変革を加速,SAP
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