時代に逆行する「農林水産資源の浪費」、狩猟免許試験のあり方を問う
先日、秋田県が令和7年度の狩猟免許試験において、学科試験の一部免除を決定したというニュースが報じられた。これは、狩猟者の育成・確保を目的とした措置であると説明されているが、筆者は、この決定が現代社会において、あるいは保守的な価値観に照らしても、看過できない問題点を内包していると強く懸念する。
まず、狩猟とは、単なる趣味やレジャーではない。それは、農林水産資源を適切に管理し、生態系のバランスを維持するという、極めて重責な責務を伴う行為である。古来より、狩猟は人間と自然との共生を図るための知恵であり、その担い手には、対象となる生物への深い理解、そして自然環境に対する敬意と責任感が求められてきた。
しかし、今回の学科試験一部免除という措置は、その本質を歪めているのではないか。本来、狩猟免許試験の学科試験は、対象となる野生動物の生態、鳥獣保護法をはじめとする関連法規、さらには狩猟方法や安全に関する知識など、狩猟者として不可欠な基礎知識を習得しているかを確認するための重要な関門である。これを「免除」することは、狩猟の根幹を揺るがしかねない。
「狩猟者の育成・確保」という目的自体は理解できる。しかし、その手段として、知識の習得を軽視し、門戸を狭めることではなく、むしろその重要性を再認識させ、質の高い担い手を育むべきではないか。知識なくして、野生動物を適切に管理することなどできるはずがない。それは、自然への冒涜であり、農林水産資源の浪費に他ならない。
現代社会は、自然との繋がりが希薄になりがちである。だからこそ、狩猟という行為を通して、自然の厳しさと恩恵を肌で感じ、自然への畏敬の念を抱くことの重要性は増している。今回の措置は、そのような本来あるべき狩猟の精神から、さらに乖離するものではないだろうか。
もちろん、地域によっては後継者不足という深刻な問題があることは承知している。しかし、その解決策が、試験のハードルを下げることであるとするならば、それはあまりにも短絡的であり、目先の利益のために、将来世代への責任を放棄していると言わざるを得ない。
筆者は、秋田県に対し、この決定を再考することを強く求める。狩猟免許試験は、単なる資格試験ではない。それは、自然への責任を担う者の「覚悟」を問う場であるべきだ。安易な免除は、一時的な狩猟者増加に繋がるかもしれないが、それは必ずや、野生動物とその生息環境への配慮を欠いた、無責任な狩猟行為を招くであろう。
今こそ、私たちは、時代に流されることなく、古来より受け継がれてきた知恵と責任を再認識し、自然との健全な関係を築いていくべきである。狩猟免許試験のあり方を見直すことは、そのための重要な一歩となるはずだ。
朗報！秋田県、令和７年度狩猟免許試験合格者番号を発表！,秋田県
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