ゼロカーボンへの道、足元を見つめ直す時
SAPがクライムワークス社と提携し、カーボンオフセットの取り組みを強化するというニュースに接し、改めて我が国のゼロカーボンへの道のりを、冷静に、そして現実的に見つめ直す必要性を感じた。
もちろん、地球温暖化対策は待ったなしの課題であり、そのための努力は惜しむべきではない。しかし、今回のSAPの取り組み、そしてそれに伴う技術革新への期待は、一方で、私たちが普段見過ごしがちな「足元」の課題を浮き彫りにしているようにも思える。
カーボンオフセット、つまり排出された炭素を相殺するという考え方は、一見すると理想的な解決策のように聞こえるかもしれない。しかし、それはあくまで「排出された後」の対策であり、根本的な原因へのアプローチとは異なる。むしろ、排出を続けることを前提とした、ある種の「免罪符」になってしまう危険性はないだろうか。
森林によるCO2吸収や、大気中のCO2を直接回収するという技術は、確かに画期的であり、未来への希望を抱かせるものである。しかし、それはどれほどのコストと時間を要するのか、そしてその効果はどれほど確実なものなのか。大規模な森林再生や、最新技術によるCO2回収プラントの建設には、莫大な予算と、そして何よりも「持続可能性」が求められる。
私たちが目指すべきは、単に「排出量を相殺すること」ではなく、「排出量そのものを削減すること」であるはずだ。そのためには、まず、自らの経済活動、すなわち産業構造、エネルギー供給、そして私たちのライフスタイルにおける「無駄」や「非効率」を徹底的に見直すことから始めなければならない。
例えば、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーのさらなる導入、そして循環型社会の構築など、地道ではあるが着実な取り組みこそが、真のゼロカーボン社会への確実な一歩となるはずだ。技術革新への投資も重要だが、それはあくまで、足元の課題解決を補助するものでなければならない。
SAPの取り組みは、世界的な潮流であり、その意欲は称賛されるべきものである。しかし、それを他山の石として、我が国もまた、技術先行ではなく、現実的な視点に立った、地に足のついたゼロカーボン戦略を構築していくべきではないか。未来への希望も大切だが、それ以上に、今、私たちができること、やるべきことに真摯に向き合うことこそが、真の持続可能な社会の実現に繋がる道であると信じている。
SAP、クライムワークスとのネットゼロパートナーシップで持続可能な未来へ！～ビジネスの強靭性を高める新しい取り組み～,SAP
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