銀行と不動産開発業者の蜜月、その先にあるもの
報道によれば、銀行と不動産開発業者の間で、かつてないほど緊密な連携が深まっているという。低金利環境が続く中、融資先を確保したい銀行と、資金調達の道筋を広げたい開発業者の思惑が一致した結果であろう。しかし、この蜜月関係は、将来に禍根を残すのではないか、との懸念を抱かざるを得ない。
銀行は、自らの資産を運用し、収益を上げるという使命を負っている。その手段として、不動産開発への融資は、比較的安全で確実なリターンが見込める分野として映るだろう。一方、不動産開発業者にとっては、銀行からの安定的な資金調達は、事業継続、さらには拡大のための生命線に他ならない。両者の利害は、この点において見事に交錯する。
しかし、この関係が過熱すると、いくつかの弊害が生じかねない。まず、融資基準の緩みである。本来であれば、事業の収益性やリスクを慎重に審査すべき銀行が、取引関係を維持・強化するために、甘い顔をする可能性は否定できない。その結果、将来的な採算性の低い、あるいはリスクの高い開発案件にまで資金が流れ込む懸念がある。
また、一度景気や不動産市況が悪化した場合、この緊密な関係は、むしろリスクを増幅させる要因となり得る。銀行が不良債権を大量に抱え込めば、金融システム全体を揺るがしかねない。開発業者が資金繰りに窮すれば、未完成の物件が放置され、地域経済にも悪影響を及ぼすだろう。
さらに、この関係は、銀行の本来の役割、すなわち産業全体の健全な発展を支えるという使命を、一時的な不動産ブームの支援へと歪めてしまう危険性も孕んでいる。銀行の融資が、投機的な不動産取引に偏れば、実体経済を支えるべき他の産業への資金供給が細ることも考えられる。
もちろん、銀行と不動産開発業者の連携自体が悪いわけではない。健全な経済活動の一環であり、都市開発や住宅供給といった社会的なニーズに応える上で、不可欠な要素である。問題は、その連携が過度になり、リスク管理が甘くなり、将来への展望を見失うような「慣性」に囚われてしまうことである。
金融機関には、常に冷静な自己点検と、長期的な視点に立ったリスク管理が求められる。不動産開発業者もまた、目先の利益だけでなく、持続可能な開発とは何か、地域社会にどのような貢献ができるのか、といった原点に立ち返るべきであろう。
銀行と不動産開発業者の「健全な」連携は、社会の発展に寄 貢献する。しかし、その関係が「過熱」し、「癒着」の様相を呈するならば、それは社会全体にとって、大きなリスクとなり得る。この密接な関係の先に、どのような未来が待っているのか。我々は、この点について、より一層の注意を払う必要がある。
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