酪農の現場から 持続可能な未来への道筋を求めて
カナダの酪農現場を訪れる機会を得た。広大な土地に広がる牧草地、最新鋭の設備を備えた牛舎、そして丹精込めて乳牛を育む生産者たちの姿は、日本の酪農が直面する課題を改めて浮き彫りにした。
カナダの酪農は、政府による手厚い支援や、大規模化・効率化による生産性の高さが特徴である。しかし、そこにもまた、後継者不足や、消費者ニーズの変化への対応といった課題が存在していることは、現地の生産者たちの言葉からも伝わってきた。
翻って我が国の酪農は、飼料価格の高騰、後継者不足、そして生産者の高齢化という、より一層厳しい状況に置かれている。食料安全保障の観点からも、酪農の衰退は看過できない問題である。
今回のカナダ訪問で得た示唆は大きい。単に規模を追うのではなく、それぞれの土地の特性を活かし、地域社会との共生を図りながら、消費者との信頼関係を築いていくことの重要性だ。カナダの生産者たちが、品質向上や持続可能な飼育方法に注力し、消費者への情報発信を積極的に行っている姿勢は、私たちが見習うべき点である。
政府には、短期的な補助金頼みではなく、酪農を持続可能な産業として確立するための、より長期的かつ包括的な支援策を期待したい。生産現場の声を真摯に聞き、実効性のある政策を打ち出すことが求められている。
そして私たち消費者も、食卓に並ぶ牛乳や乳製品が、どれほどの労力と情熱によって支えられているのかを理解し、その価値を再認識する必要があるだろう。価格だけでなく、生産者の顔が見える、地域に根差した酪農を応援していくことが、持続可能な未来への道筋を照らす一歩となるはずだ。
カナダの酪農現場を訪ねて ～Dairy Japanの農場視察レポートから～,Dairy Japan
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