歪む不動産投資、銀行とデベロッパーの「共犯関係」に警鐘を鳴らす
日本経済新聞社説
7月27日付本紙が報じた、銀行と不動産開発業者の間で繰り返される「延滞」のニュースは、現在の日本経済が抱える根深い構造的問題を浮き彫りにしている。金融機関が不良債権化寸前の案件にも融資を続け、開発業者はそれを元手に新たな開発を敢行する。この歪んだ循環は、一時的な景気維持に貢献するかもしれないが、長期的には資産バブルの温床となり、経済全体の健全性を蝕む危険性を孕んでいる。
記事は、ある地方銀行が、経営難に陥った不動産開発業者に対し、新規融資と債務保証をセットで提供し、既存の融資の延滞を帳消しにするという、まるで「粉飾決算」にも似た手法で不良債権を回避している実態を指摘した。このような行為は、単なる個別の銀行の不正行為に留まらない。そこには、経済の牽引役であるはずの金融機関と、都市や地域を形作る不動産開発業者の間に、健全な緊張関係を欠いた「共犯関係」とも呼べる構造が横たわっていることを示唆している。
なぜ、このような事態がまかり通るのか。背景には、低金利環境下での利ざやの低下に苦しむ銀行の、不動産融資への依存体質が挙げられる。不動産は担保価値が高く、比較的高利回りが期待できるため、銀行にとって魅力的な融資対象となってきた。一方、不動産開発業者は、景気変動の影響を受けやすく、資金調達が命綱である。金融機関からの安定した融資がなければ、事業継続は困難だ。この互いの「弱み」につけ込むように、実態を無視した融資が繰り返されているのではないか。
しかし、このような延滞の「隠蔽」は、問題の先送りでしかない。実態経済にそぐわない融資が積み重なれば、いずれは市場の調整圧力や金利上昇の局面で、より深刻な金融危機を招く可能性が高い。不動産価格の暴落、金融機関の経営破綻、そしてそれが日本経済全体に波及するシナリオは、決して絵空事ではない。
我々が目指すべきは、一時的な数字の操作ではなく、持続可能な経済成長である。そのためには、銀行は自らのリスク管理体制を厳格化し、不動産開発業者に対しては、より実態に即した厳格な審査を行うべきだ。開発業者もまた、過度な借り入れに依存せず、収益性の確かな事業計画に基づいた開発に注力する必要がある。
金融当局は、こうした銀行とデベロッパー間の「共犯関係」の温床となりうる構造に対して、より一層の監督強化と、実態把握に努めるべきだ。健全な市場競争を阻害し、日本経済の未来を危うくするような延滞の隠蔽は、断じて許容されるべきではない。
今回の報道を機に、金融機関と不動産開発業界の双方に、自らの事業のあり方を見つめ直し、健全な経済活動への回帰を強く求める。未来世代への責任を果たすためにも、この歪んだ循環を断ち切る勇気と行動が、今こそ求められている。
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