奈良県警からの「除外指定車」通達にみる、業界の未来と責任
先頃、奈良県警察からの「走行禁止除外指定車」に関する通達が、運輸業界に静かな波紋を広げている。その内容、すなわち特定の条件を満たさない車両の公道走行を事実上禁止するという措置は、一見すると交通安全のための当然の取り組みと映るかもしれない。しかし、この通達の背後にある、より本質的な課題と、それに対する業界の姿勢が問われていることを、我々は真摯に受け止めなければならない。
今回の通達は、車両の安全基準遵守という、極めて基本的な事項を改めて確認させた。しかし、それ以上に我々が注視すべきは、この通達がなぜ今、そしてなぜ奈良県から発せられたのかという点である。これは、一部の事業者の安全管理体制の甘さ、あるいは法令遵守意識の希薄さが、業界全体の信頼を損なうリスクを内包していることを示唆している。
我々の業界は、物流という社会インフラを支える重要な役割を担っている。その根幹をなすのは、人命と安全の確保である。どれだけ効率化やコスト削減を追求しようとも、安全性の低下は決して許されるものではない。今回の奈良県警の通達は、その「安全」という、言うならば創業以来の基本に立ち返ることを促す、ある種の警鐘と捉えるべきだろう。
しかし、単に「通達に従え」というだけでは、この問題の本質を捉えきれない。むしろ、我々業界自身が、この状況を招いた原因を深く内省し、主体的に改善策を講じるべき時が来ている。例えば、安全管理体制の強化、従業員教育の徹底、そして何よりも、経営層が安全確保に対する強いコミットメントを示すこと。これらは、単なるコンプライアプライアンス（法令遵守）の問題ではなく、企業の持続可能性、さらには業界全体の存続に関わる喫緊の課題である。
「走行禁止除外指定車」という言葉は、ある意味で、業界の「隠れた問題」を白日の下に晒したとも言える。これを機に、各社は自社の車両管理、安全基準、そして何よりも「安全」に対する企業文化を徹底的に見直すべきである。そして、業界団体としては、統一的な安全基準の策定や、優良事業者の表彰制度などを通じて、安全意識の向上と啓発に努めなければならない。
奈良県警からの通達は、我々業界にとって、厳しい「宿題」である。しかし、この宿題に真摯に向き合い、業界全体で「安全」という基本に立ち返るならば、それはむしろ、業界の信頼回復とさらなる発展の契機となり得るだろう。我々は、この通達を、単なる規制強化と捉えるのではなく、業界が自らの足元を見つめ直し、より強固な基盤を築くための「成長痛」と捉え、前向きに取り組んでいくべきである。
奈良県警からのお知らせ：通行禁止除外指定車標章の申請について（2025年7月24日公開）,奈良県警
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