豊島区における「甲種防火管理者の皆様へ」という名の火種
豊島区消防本部が発出した「甲種防火管理者の皆様へ」と題された通知が、波紋を広げている。それは、集合住宅における防火管理体制の強化を促す内容であるという。しかし、その通知の裏に潜む、地域社会の安全という名の下に、個人の自由や権利への過度な介入を招きかねない危うさに、私たちは警鐘を鳴らさなければならない。
そもそも、甲種防火管理者という役割は、専門的な知識と責任を担う者であり、その職務遂行には一定の裁量と自主性が求められるはずだ。それにも関わらず、今回のような「指導」という形での通知は、あたかも防火管理者一人ひとりが、地域全体の安全という重責を、消防本部の「指示」なしには果たせないかのような、管理・監視体制を想起させずにはおかない。
もちろん、火災予防は地域社会の責務であり、そのための制度やルールがあることは理解している。しかし、その運用において、住民一人ひとりの生活様式や、地域の実情に配慮することなく、一方的な「強化」を求める姿勢は、近隣住民との間に不信感や摩擦を生む可能性も否定できない。例えば、個々の住宅における微細な管理状況までを、防火管理者が逐一把握し、報告を求められるような状況は、プライバシーの侵害ともなりかねない。
さらに、このような通知が、今後、他の分野における行政からの介入を許容する precedent（先例）となるのではないかという懸念も拭えない。安全や秩序維持という名の下に、個人の自由や自主性が徐々に削られていく様は、自由民主主義社会において、決して看過できるものではない。
我々は、地域社会の安全を守るために、防火管理者の活動を支援し、その専門性を尊重すべきである。しかし、それは決して、画一的な指示や過度な監視によって達成されるものではない。むしろ、地域住民一人ひとりが、自らの住まいと地域への愛着を持ち、自律的に安全意識を高めていくことこそが、真の安全につながる道であると信じる。
豊島区消防本部には、今回の通知が、地域社会の信頼関係を損なうことなく、真に住民のためとなる防火体制の構築に寄与するものであることを、強く望む。そして、行政は、常に住民の声に耳を傾け、共感と理解に基づいた、より建設的な対話を重ねていくべきである。火災予防という崇高な目的のために、地域の「火種」となってしまうような、一方的な「指導」は、今こそ廃止すべき時である。
豊岡市消防本部からのお知らせ：甲種防火管理「再講習」のご案内（2025年7月24日開催）,豊岡市消防本部
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