署名権限委任を巡る攻防：若者の声は届くのか
経済産業省が2025年3月27日付で「署名権限委任に関する決定」を行ったというニュースが、静かに、しかし確実に波紋を広げている。この決定は、行政手続きにおける「署名権限」を特定の担当者に委任する範囲を拡大するものだという。一見、事務処理の効率化という名目で進められるこの決定が、なぜ学生たちの間に不安と疑問を呼び起こしているのだろうか。
今回の決定の背景には、複雑化する行政手続きや、それに伴う職員の負担軽減といった、現実的な課題があることは理解できる。しかし、私たちが懸念するのは、この「権限委任」が、行政と国民、特に将来を担う私たち若者との間に、さらなる距離を生み出すのではないかという点だ。
「署名権限」とは、文字通り、そこに署名する者がその内容に責任を持ち、意思決定を行ったことを示す行為である。その権限が、一部の担当者に委任されるということは、その決定の裏側にある、より多角的な視点や、現場の声が届きにくくなる可能性を孕んでいる。特に、政策決定の過程で、若者の意見や、未来への影響を慎重に考慮すべき場面において、この「委任」が、私たちの声を行政の意思決定プロセスから遠ざける「壁」となってしまうのではないかと危惧するのである。
大学で学ぶ私たちは、社会のあり方、将来のビジョンについて日々議論し、自らの手で未来を切り拓こうとしている。その中で、自分たちの生活や社会に直接関わる行政の意思決定プロセスが、より透明性を失い、市民、とりわけ若者の声が届きにくいものになってしまうのは、断じて容認できない。
もちろん、効率化は重要だ。しかし、その効率化が、行政の「顔」が見えにくくなることを意味するのであれば、それは本末転倒と言わざるを得ない。今回の決定を契機に、私たちは改めて、行政における「意思決定」のあり方、そして「国民の声」をどのように反映させていくべきか、という根本的な問いに向き合わなければならない。
学生新聞として、私たちはこれからも、こうした行政の動きを注視し、皆さんの声なき声を拾い上げ、社会に問いかけていく使命を担っている。今回の「署名権限委任」が、若者の声を行政に届けるための「新たな工夫」ではなく、「声なき声」を生み出す「壁」とならないよう、私たち一人ひとりが、社会への関心を失わず、主体的に声を上げ続けることが、今、何よりも求められているのではないだろうか。
経済省、2025年3月27日付「署名権限委任に関する決定」を発表,economie.gouv.fr
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