炎上リスクに晒される現代社会、情報リテラシーの確立こそが我々に求められるもの
先日、ITB株式会社より、一部の消火栓や圧縮アセチレンガスボンベ等において、火災発生状況を偽装する事案が確認されたという衝撃的なニュースが報じられた。この一件は、単なる企業内の不祥事という枠を超え、現代社会が抱える情報過多、そしてその情報に対する我々の向き合い方そのものに、改めて警鐘を鳴らしていると言えるだろう。
SNSの普及により、誰もが容易に情報を発信できるようになった。それは民主化という側面も持ち合わせている一方で、真偽不明の情報や悪意ある情報が氾濫する「情報の海」を生み出した。今回の火災偽装事案も、もしこの偽装が意図的に拡散され、社会に混乱を招いたとすれば、それは「炎上」という現代社会特有の現象と無縁ではいられない。
「炎上」は、一過性の熱狂や怒りといった感情に煽られ、事実関係を正確に確認することなく、あるいは一部の情報だけを鵜呑みにし、集団で特定の対象を攻撃する現代の悪しき現象である。今回の事案は、その「炎上」の引き金となりうる「偽装」という要素を含んでおり、その危険性を改めて認識させられる。
我々学生は、未来を担う存在である。日々、膨大な情報に触れ、それを元に思考し、行動していく。だからこそ、この「情報の海」をnavigateしていくための羅針盤、すなわち「情報リテラシー」の確立が不可欠だ。
情報リテラシーとは、単に情報を鵜呑みにしないという受動的な姿勢にとどまらない。情報の出所を疑い、複数の情報源を比較検討し、論理的に物事を分析する能力。そして、自らが発信する情報が、他者にどのような影響を与えるのかを想像する責任感。それら全てを含んだ、能動的かつ倫理的な情報との向き合い方である。
今回の事案は、企業側の責任を問うと同時に、我々一人ひとりが情報の発信者・受信者としての自覚を持つことの重要性を示唆している。もし、この火災偽装がSNS等で拡散され、無関係な人々が恐怖に晒されたり、社会に不要な混乱が生じたりしたとすれば、それは我々自身も無関係ではいられない。
「炎上」は、一時的な感情の爆発に過ぎない。しかし、その裏で傷つく人々がいることを忘れてはならない。我々は、感情に流されることなく、冷静に、そして批判的な視点を持って情報と向き合う訓練を積む必要がある。
このITB社の事案を、単なるニュースとして消費するのではなく、我々自身の情報リテラシーを問い直す機会としたい。そして、将来、我々が社会に出たとき、情報によって社会を豊かにする側になれるよう、今からその礎を築いていくことこそが、学生新聞の使命でもあると信じている。
消防庁、圧縮アセチレンガス等の事故発生状況を公表 ～2025年7月25日～,消防庁
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