減税による経済活性化への期待と、その持続可能性への一石
フランス経済・財務省が2025年3月27日付で「decision n-2025-24」を発令したとの報道に接し、日本の経済界、とりわけ中小企業経営者の間には、期待と同時に少なからぬ戸惑いの声も聞かれる。この決定は、フランス政府が経済活性化を目指し、法人税率の引き下げといった大胆な措置に踏み切ったことを示唆している。グローバルな経済競争が激化する中、企業収益への直接的な影響は大きく、我が国経済の行方を占う上でも、このフランスの事例から学ぶべき点は多い。
低金利環境が長期化し、投資意欲が減退する中で、法人税率の引き下げは、企業の設備投資や研究開発へのインセンティブを高め、ひいては雇用創出や賃金上昇につながるという期待が先行するのは自然な流れであろう。特に、国際的な法人税率の引き下げ競争という文脈で捉えれば、フランスのこの決断は、企業誘致や国際競争力強化の観点から、一定の合理性を持つものと評価できる。
しかしながら、我々はこのニュースを単なる「減税」という言葉で矮小化してはならない。経済の血流を良くする薬にも、副作用はつきものである。法人税率の引き下げは、必然的に政府の税収減をもたらす。その穴埋めをどうするのか。歳出削減による財政規律の維持、あるいは将来的な増税の可能性といった、経済の持続可能性に関わる根源的な問いに、フランス政府はどのように向き合っていくのか。その手腕が問われることになるだろう。
また、減税の効果は、一律に全ての企業に及ぶわけではない。むしろ、既に収益基盤のしっかりした大企業ほど、その恩恵を享受しやすいという構造的な問題も指摘せざるを得ない。中小企業、とりわけイノベーションの源泉となりうるスタートアップ企業への支援策と、法人税率引き下げの効果が、どのように相乗効果を生み出すのか、あるいは逆に格差を拡大させてしまうのか。その見極めは極めて重要である。
日本の経済界も、フランスの動向を注視しつつ、自国の経済政策を冷静に分析する必要に迫られている。法人税率の引き下げのみに目を奪われるのではなく、企業の生産性向上、イノベーション促進、そして国民一人ひとりの所得向上に資する、より包括的で持続可能な政策パッケージを模索すべきである。フランスの事例は、経済活性化への「王道」は一つではないことを示唆している。減税の光と影を見極め、我が国の未来を照らす、より確かな一歩を踏み出していきたい。
フランス経済・財務省、2025年3月27日付「Décision n° 2025-24」を発令 – 権限委任による迅速な意思決定を目指す,economie.gouv.fr
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