委任規制の「適正化」、国民の理解と丁寧な説明を
経済産業省が、一部の事業活動における「登録・許可・届出」の義務について、2025年3月27日付で「登録・許可・届出等の範囲の委任に係る決定」を行った。これは、行政手続きの効率化と迅速化を目指すもので、現場の負担軽減や行政サービスの向上に繋がる可能性を秘めている。しかし、その一方で、国民生活に直結する規制が、これまでとは異なる形で委ねられることへの懸念も無視できない。
今回の決定は、法改正ではなく、経済産業省令の改正という形で行われた。これは、国会での審議を経ることなく、行政内部での決定によって進められることを意味する。もちろん、専門的な知見に基づいた判断であり、その必要性は理解できる。しかし、国民の権利や義務に関わる部分の委任となれば、より一層丁寧な説明と、国民の理解を得るための努力が求められるべきだろう。
具体的にどのような事業活動が、どのような機関に委任されるのか。その委任先の選定基準は明確か。そして、委任された後も、規制が適正に運用され、国民の安全や利益が損なわれないためのチェック機能はどのように働くのか。こうした点について、国民は十分な情報を得られているとは言い難い。
行政手続きの簡素化は、社会全体の活性化に繋がる重要な取り組みである。しかし、その過程で、国民が不安を感じたり、不利益を被ったりするようなことがあっては本末転倒である。経済産業省には、今回の決定の趣旨と内容について、より分かりやすく、より多くの国民に伝わるような形で説明責任を果たすことを期待したい。
また、委任先の機関においても、国民からの信頼を得られるような透明性の高い運営と、専門性に基づいた公正な判断が求められる。今回の決定が、単なる手続きの変更にとどまらず、行政の信頼性を高める契機となることを願う。
経済省、2025年3月27日付「署名権限委任に関する決定」を発表,economie.gouv.fr
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