伊方原発、緊迫の避難訓練 住民の不安、官民挙げて払拭を
先月25日、伊方発電所において、万が一の事態に備えるための住民避難訓練が実施された。今回の訓練は、原発事故発生を想定し、周辺住民を安全な場所へと迅速に避難させる手順を確認する貴重な機会となった。関係者各位の尽力に敬意を表するものである。
しかし、訓練の実施とは裏腹に、原発に対する住民の不安は払拭されているとは言い難い。特に、近年頻発する自然災害への懸念、そして原発の安全性を巡る議論が未だくすぶる中で、住民が抱える「もしも」への問いかけは、決して軽視されてはならない。
原発の安全確保は、事業者、国、そして地域社会が一体となって取り組むべき最重要課題である。今回の避難訓練は、その一端を示すものではあるが、訓練で得られた教訓をどう活かし、実効性のある避難計画へと昇華させていくのか。その具体的な道筋を、より一層明確に示す必要があるだろう。
また、避難計画の実効性とは、単に手順を確認するだけに留まらない。住民一人ひとりが、どのような状況下で、どのように行動すれば安全が確保されるのか、その情報を正確かつ分かりやすく共有することが不可欠だ。事業者は、地域住民との対話を密にし、質問や懸念に真摯に耳を傾ける姿勢を貫かなければならない。
さらに、国は、原発の安全基準の検証を怠らず、最新の科学的知見に基づいた厳格な管理体制を維持することが求められる。そして、地域住民の生活基盤を守るための財政的支援や、将来的なエネルギー政策における地域への配慮も、継続的に行っていくべきである。
伊方原発の安全な稼働は、地域経済にとって重要な要素であり、エネルギー供給の安定化にも寄与する。しかし、その基盤となるのは、住民の安心と安全への信頼があってこそである。今回の訓練を契機に、関係者が責任の所在を明確にし、住民との信頼関係を再構築していく努力を、粘り強く続けていくことを期待したい。
伊方発電所、従業員の救急搬送について（2025年7月25日発表）,愛媛県
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