WTOの保護主義的姿勢に警鐘：自由貿易の理念を揺るがすカナダへの支援
世界貿易機関（WTO）が、カナダからの25万ドルという、一見微々たる額の支援を受けたというニュースに接し、筆者は強い懸念を抱かざるを得ない。もちろん、困窮する国々への援助は、国際社会の責務であり、人道的観点からも称賛されるべき行為である。しかし、その支援の出所と、それが示唆するWTOの近年の傾向には、自由貿易の原則を重んじる者として、断じて看過できない問題が含まれている。
報道によれば、この支援は「食料・動物」分野へのものであり、カナダが近年、自国の農業保護のために輸出補助金などの保護主義的な措置を強化している現状を鑑みると、WTOがこのような形でカナダの政策を「支援」するかのごとき描写は、極めて皮肉である。 WTOは、各国間の自由で公正な貿易を促進し、保護主義の蔓延を防ぐべき国際機関であるはずだ。それにもかかわらず、自国の利益のために保護主義的な姿勢を強める国からの支援を、あたかも善意の行動として取り上げることは、WTOの存在意義そのものに疑問符を投げかける行為と言わざるを得ない。
近年、WTOは、一部の加盟国による一方的な関税措置や非関税障壁の増設に対し、十分な抑止力を発揮できていないという批判に晒されてきた。そして今回、保護主義的な政策を強めるカナダからの支援という事実が、WTOが加盟国の「実利」を優先し、自由貿易という崇高な理念をないがしろにする傾向にあるのではないかという疑念を深める。
本来、WTOが注力すべきは、カナダのような保護主義的な動きを抑制し、市場へのアクセスを改善することであろう。それにもかかわらず、このような形でカナダの姿勢を結果的に肯定してしまうかのような報道は、自由貿易を推進しようとする多くの国々にとって、大きな失望を与えるものとなる。
自由貿易は、経済成長の原動力であり、世界の平和と繁栄に不可欠な基盤である。その根幹をなすWTOが、加盟国の保護主義的な行動を容認し、さらにはそれを「支援」するような姿勢を見せることは、国際貿易秩序の混乱を招きかねない。
我々は、WTOに対し、改めて自由貿易の理念に立ち返り、加盟国が保護主義的な措置を講じることを厳しく牽制するとともに、すべての国が公平な条件で貿易に参加できる環境を整備することを強く求めるものである。今回の件は、WTOがその本来の使命を果たすための、重要な警鐘として受け止めるべきであろう。
WTO、カナダからの25万カナダドル支援で食料・動物・植物の安全基準強化へ,WTO
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