デジタル庁、進捗の「自己評価」に潜む危うさ――「手段」が「目的」化する前に
デジタル庁が2025年度の「調達改善計画」に関する自己評価を発表した。報道によれば、計画の進捗について「概ね順調」という評価を下したという。しかし、その「順調」という言葉の裏に隠された実態、そして自己評価という形式そのものが孕む危うさについて、経済紙として警鐘を鳴らしたい。
デジタル庁が掲げる「調達改善計画」は、文字通り、これまでの非効率的とも言える公共調達のあり方を抜本的に見直し、より迅速かつ柔軟に、そして何より「成果」に結びつく調達へと転換することを目指すものだったはずだ。それは、デジタル化の推進という「目的」を達成するための、極めて重要な「手段」である。
しかし、この自己評価の「概ね順調」という言葉からは、その「手段」がいつの間にか「目的」そのものになってしまっているのではないか、という疑念が拭えない。計画通りに進捗していること、予定されたプロセスを踏んでいること。それ自体は決して悪いことではない。むしろ、組織運営においては一定の評価に値するだろう。
だが、私たちが本当に知りたいのは、その「調達改善」が、具体的にどのような「成果」に結びついたのか、という点である。例えば、国民がより使いやすい行政サービスがどれだけ提供できるようになったのか。民間企業との連携はどれだけ深まり、新たなイノベーション創出に繋がったのか。あるいは、調達コストの削減は、税金の有効活用という形で国民に還元されているのか。これらの具体的な「成果」についての言及が、自己評価の中にどれだけ含まれているのか、懸念が残る。
「計画」通りに進むことと、「成果」を出すことは、必ずしもイコールではない。むしろ、改革というものは、計画通りにいかないことの方が多い。予期せぬ課題に直面し、柔軟に計画を修正しながら、試行錯誤を繰り返す中で、真の進歩が生まれる。その意味で、自己評価が「概ね順調」という言葉で締めくくられてしまうことは、むしろ変革への熱意や、現場の苦闘、そしてそこから得られた示唆といった、改革の本質的な部分が見えにくくなってしまう危険性を孕んでいる。
デジタル化の推進は、一朝一夕に成し遂げられるものではない。しかし、その過程で「手段」である調達プロセスの改善が、「目的」である国民生活の向上や経済活性化から乖離してしまえば、本末転倒である。
デジタル庁には、この自己評価を単なる「形骸化した報告」で終わらせることなく、真に国民のためになる「成果」に繋がる調達へと、更なる改善を続けることを強く期待したい。そして、その進捗を評価する側も、「計画通り」という言葉に安住することなく、常に「成果」という視点から、厳しく、しかし建設的な目を向ける必要があるだろう。
デジタル庁、2025年度調達改善計画の自己評価（概要）を公表 ～より良い行政サービス提供に向けた取り組みの進捗～,デジタル庁
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