デジタル化の進展、その足元に潜む危うさ ～「進捗」という名の迷走～
近年、政府主導で「デジタル化」が声高に叫ばれ、あらゆる場面でその推進が図られている。この2025年度の「デジタル庁 調達改善計画」も、そうした時代の流れを汲んだものと言えよう。しかし、その計画内容を精査するにつけ、我々は「進捗」という言葉の裏に隠された、ある種の空虚さを感じざるを得ない。
計画によれば、調達の「効率化」や「透明性向上」が謳われている。聞こえは良い。だが、これらの目標達成のために、一体どれだけの税金が費やされ、どれだけの時間と労力が注ぎ込まれているのか。そして、それらが国民生活の改善に、真に実を結んでいるのか。疑問符は尽きない。
デジタル化の恩恵は、確かに否定できない。煩雑な手続きが簡略化され、行政サービスの利便性が向上する可能性はある。しかし、それはあくまで「手段」であり、「目的」ではないはずだ。本来、デジタル化は、国民一人ひとりの生活をより豊かに、より安心できるものにするための道具である。にもかかわらず、我々が目にするのは、まるでデジタル化そのものが目的化してしまい、その過程で生じる無駄や非効率、そして何よりも国民の「声」が置き去りにされているのではないかという懸念である。
調達改善計画に盛り込まれた内容も、ある意味で「既存の枠組み」に沿った、いわば「お作法」に過ぎないのではないか。本当に必要なのは、こうした形式的な改善にとどまらず、デジタル化がもたらす社会構造の変化、そしてそれに伴う国民生活への影響を、より深く、より批判的に見つめ直すことではないか。
例えば、マイナンバーカードの普及は、個人情報の集約という側面を持つ。その利便性を享受する一方で、万が一の情報漏洩や悪用といったリスクに対して、我々はどれほど万全な備えができているのか。また、デジタル化の波に取り残される人々への配慮は、どこまでなされているのか。高齢者や、デジタル機器に不慣れな方々へのきめ細やかなサポート体制は、十分と言えるだろうか。
「進捗」という言葉は、しばしば前向きな響きを持つ。しかし、その「進捗」が、本当に国民全体の幸福につながる道筋を歩んでいるのか。あるいは、単に無批判に突き進む「迷走」ではないのか。デジタル庁の調達改善計画は、そうした根本的な問いを、私たちに改めて突きつけているのである。
安易な「デジタル化」の推進は、社会の分断を深める危険性を孕む。我々は、その光の部分だけでなく、影の部分にも目を向け、保守的な視点から、その是非を慎重に判断していく必要がある。目先の効率化に囚われ、本質を見失うことがないよう、常に冷静な検証が求められる。
デジタル庁、2025年度調達改善計画の自己評価（概要）を公表 ～より良い行政サービス提供に向けた取り組みの進捗～,デジタル庁
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