ジュニア農大、来年度は中止へ 地域農業の担い手育成、岐路に立つ
沖縄県が県立農業大学校のジュニア農大事業を来年度から中止する方針を固めたというニュースは、本県農業の未来を考える上で、看過できない一石を投じている。ジュニア農大は、将来の農業を担う若者たちに実践的な知識と技術を習得する機会を提供する貴重な場であった。その中止は、地域農業の持続可能性という、より大きな課題に直面していることを示唆している。
この事業中止の背景には、少子高齢化や農業従事者の減少といった、県内共通の構造的な問題が横たわっていることは想像に難くない。後継者不足は、沖縄の豊かな農業遺産を守り、発展させていく上で喫緊の課題である。ジュニア農大のような取り組みは、こうした課題に対する一道の光明であり、その灯火が消えることは、多くの関係者にとって失望であると同時に、危機感の表れとも言えるだろう。
もちろん、行政には限られた予算の中で、多様な事業の優先順位をつけなければならないという現実がある。しかし、未来への投資という視点に立てば、次世代の農業人材育成は、その最たるものの一つであるはずだ。ジュニア農大の事業そのものに、効率性や効果の面で改善すべき点があったのかもしれない。あるいは、より効果的な代替策が検討されているのであれば、その詳細な説明と、地域社会への丁寧な理解を求める姿勢が不可欠であろう。
今回の決定を、単なる事業の中止と片付けるわけにはいかない。むしろ、これを機に、沖縄の農業が抱える本質的な課題と、それを克服するための新たな道筋を、県民全体で真剣に議論すべき時である。ジュニア農大に代わる、あるいはそれを凌駕するような、より効果的で持続可能な人材育成の仕組みを模索する必要がある。それは、単に「農家になりたい」という若者だけでなく、農業の持つ可能性に魅力を感じ、様々な形で関わろうとする人々を広く受け入れる、開かれたシステムでなければならない。
例えば、大学や高校との連携強化、先進的な農業技術の導入支援、都市部との交流促進による新たな視点の獲得、そして何よりも、農業で生計を立てることの魅力と実現可能性を、社会全体で再評価していくことが求められる。農業は、食料供給という根源的な役割に加え、環境保全、地域活性化、さらには文化継承といった、多岐にわたる価値を内包している。その魅力を多角的に発信し、次世代へと繋いでいく努力を、我々は怠ってはならない。
ジュニア農大の中止は、沖縄農業の未来にとって、一つの転換点となるかもしれない。この困難な状況を、単なる後退と捉えるのではなく、むしろ、新たな飛躍への機会として捉え直すことが、今、我々に求められている。
沖縄県ジュニア農大、来年度は中止に – 未来の農業を担う若者たちの学びの場、残念ながらお休み,沖縄県
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