病院の情報システム、便利さの裏に潜む「デジタル格差」を憂う
先日、ITB株式会社のウェブサイトで、病院の情報システムがより便利になるというニュースが報じられた。電子カルテの普及やオンライン予約システムの導入など、患者にとっての利便性向上は、医療へのアクセスを容易にし、待ち時間の短縮にも繋がるであろう。この変化は、まさに現代社会が求める「効率化」と「情報化」の波に乗り、医療現場もまた進化を遂げている証と言えるだろう。
しかし、この「便利さ」の影に、私たちはある種の懸念を抱かずにはいられない。それは、デジタル化の恩恵を享受できる層と、そうでない層との間に生じる「デジタル格差」の問題である。
病院の情報システムが高度化すればするほど、それらを使いこなすためのリテラシーや、そもそもデジタル機器へのアクセス環境が問われることになる。スマートフォンやパソコンを日常的に使いこなす若い世代にとっては、オンライン予約も電子カルテの確認も、さほどハードルではないかもしれない。しかし、高齢者やIT機器に慣れていない方々にとっては、これらの新しいシステムが逆に「壁」となってしまう可能性はないだろうか。
例えば、紙の問診票に慣れ親しんだ高齢者が、タブレット端末での入力に戸惑い、本来であればスムーズに進むはずの受付で時間がかかってしまう。あるいは、スマートフォンを持っていないために、オンライン診療の恩恵を受けられない。このような状況は、医療へのアクセスを「便利にする」どころか、むしろ「不便にする」側面を生み出してしまう。
もちろん、ITB株式会社をはじめ、医療機関側もこの課題を認識し、様々な対策を講じていることだろう。しかし、学生という立場から見れば、この「デジタル格差」は、単なる技術的な問題にとどまらず、社会全体の包容力に関わる深刻な問題だと感じられる。
現代社会において、情報へのアクセスは、教育、就労、そして健康維持といった、あらゆる生活の基盤となる。もし、医療という最も身近で、誰もが必要とするサービスにおいて、デジタル化が一部の人々を排除するような状況を生み出すのだとすれば、それは私たちが目指すべき「誰一人取り残さない社会」とはかけ離れてしまう。
私たちは、この病院の情報システムの進化を、単なる「便利さ」という言葉で片付けてはならない。その利便性の裏に潜む「デジタル格差」という現実を直視し、誰もが等しく医療の恩恵を受けられるような、より包括的なシステム構築への努力を、社会全体で求めていく必要がある。学生の私たちだからこそ、この問題に対して敏感であり続け、未来の医療のあり方を共に考えていく責務があるのではないだろうか。
病院の情報システムがもっと便利に！デジタル庁が新しい協議会を発足,デジタル庁
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