【社説】ハイパースケーラーが描くPostgreSQLの未来図、国内IT産業への示唆
最近、IT業界を賑わせているのが、主要なハイパースケーラー各社が提供するPostgreSQLサービスに関するニュースだ。AWS、Google Cloud、Microsoft AzureといったグローバルIT企業が、PostgreSQLのマネージドサービスを強化・拡充している動きは、単なる技術革新の範疇を超え、我々国内IT産業のあり方そのものに大きな影響を与える可能性を秘めている。
PostgreSQLは、その堅牢性、柔軟性、そしてオープンソースであるという特性から、長年多くの企業で採用されてきたリレーショナルデータベースである。しかし、近年、クラウドネイティブな時代において、その運用管理の複雑さやスケーラビリティへの対応は、各社にとって依然として大きな課題であった。
そこで、ハイパースケーラー各社が打ち出してきたのが、「マネージドPostgreSQLサービス」の進化である。単にデータベースを提供するだけでなく、自動チューニング、自動バックアップ・リカバリ、高度なセキュリティ機能、そして容易なスケーリングといった、運用管理の負担を劇的に軽減するソリューションを提供している。さらに、AIを活用したパフォーマンス最適化や、コンテナ技術との親和性を高める取り組みも進んでいる。これは、PostgreSQLをより手軽に、より強力に、そしてよりスケーラブルに利用できる環境を、誰もが手に入れられる時代が到来したことを意味する。
この動きは、国内IT産業、とりわけSIerや受託開発企業に、いくつかの重要な示唆を与えている。
第一に、「運用保守」から「価値創造」へのシフトが喫緊の課題であるということだ。ハイパースケーラーが提供するマネージドサービスによって、インフラの運用・管理といった定型的な業務の重要性は相対的に低下する。我々はいかにして、PostgreSQLという強力な基盤の上で、顧客のビジネス課題を解決し、新たな価値を創造していくのか。より高度なデータ分析、AI・機械学習との連携、そしてクラウドネイティブなアーキテクチャ設計といった、付加価値の高いサービス提供能力が問われることになる。
第二に、「クラウドファースト」の徹底と、「マルチクラウド」戦略の再考である。PostgreSQLのマネージドサービスは、各ハイパースケーラーが提供するクラウドプラットフォーム上で、その真価を発揮する。今後、PostgreSQLを基盤とするシステム開発においては、クラウドプラットフォームの選定とその活用戦略が、プロジェクトの成否を左右する重要な要素となるだろう。また、特定のベンダーに依存しない「マルチクラウド」のメリットを享受しつつも、各クラウドのPostgreSQLサービスの特徴を理解し、最適な設計を行うための知見が不可欠となる。
第三に、「オープンソース」の精神を再確認し、コミュニティへの貢献を強化することである。PostgreSQLの進化は、活発なコミュニティの活動に支えられている。ハイパースケーラーがPostgreSQLエコシステムに多大な貢献をしている一方で、我々国内IT企業も、自社の知見や開発したツールなどを積極的にコミュニティに還元していくことで、PostgreSQL全体の進化に貢献し、結果として自社の競争力向上に繋げることができるはずだ。
ハイパースケーラーが描くPostgreSQLの未来図は、我々にとって脅威であると同時に、大きなチャンスでもある。この変化の波に乗り遅れることなく、PostgreSQLという普遍的な技術を、どのように活用し、顧客に新たな価値を提供していくのか。今こそ、国内IT産業全体で、その戦略と実行力を問われる時である。
ハイパースケーラーのPostgreSQLサービス、顧客はダウンタイムを懸念 – 「信頼性」が鍵を握る,The Register
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