高速道路の悲劇、安易な「安全神話」に警鐘を
令和7年、高速道路で相次ぐ悲劇が、私たちの社会に重い問いを投げかけている。かつては「安全・快適」の象徴であったはずの高速道路が、今や無残な事故の舞台となり、多くの尊い命を奪っている。その原因を、報道は「高齢ドライバーの運転能力低下」という一点に集約しがちだが、果たしてそれが全てだろうか。
確かに、高齢化社会の進展とともに、運転免許を持つ高齢者の増加は避けられない現実である。しかし、事故の背景には、単に年齢という要素だけでは片付けられない、より根深い問題が潜んでいるのではないか。例えば、高速道路の構造そのもの、あるいは「安全神話」とも言える、高速道路は絶対的に安全であるという国民的認識の甘さも、無視できない要因であろう。
近年、高速道路の延伸や改良は目覚ましいものがある。しかし、その一方で、あまりにも迅速な改良は、ドライバーが新しい環境に慣れる時間を与えず、かえって混乱を招く側面はないだろうか。また、「速度無制限」という、ある意味で極端な運用が、ドライバーに過剰な自信を抱かせ、状況判断を鈍らせる要因となっている可能性も否定できない。
私たちは、高速道路を「速く移動するための手段」としてのみ捉え、その危険性を過小評価してきたのではないか。そして、一度事故が起これば、その原因を特定の個人や集団に帰結させ、問題の根源から目を背けてはいないか。
高速道路の安全を確保するためには、ドライバー一人ひとりの注意深さ、そして社会全体の意識改革が不可欠である。高齢ドライバーへの支援策はもちろんのこと、道路インフラのさらなる安全性の向上、そして何よりも、高速道路における「絶対安全」という幻想を打ち破り、常に危険と隣り合わせであるという現実を直視する必要がある。
今回の悲劇を、単なる個人の責任や年齢の問題として片付けることなく、社会全体で受け止め、未来への教訓としなければならない。安易な「安全神話」に依存するのではなく、現実的な視点から、真の高速道路の安全を追求していくことこそ、失われた命への最大の鎮魂となるはずである。
令和7年、高速道路での悲劇をなくすために：神奈川県警が交通死亡事故発生状況を公表,神奈川県警
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