陸自、タリスマン・セイバー25で「中間距離能力」の連携強化へ ～進化する抑止力、日米同盟の新たな一手～
7月23日、陸上自衛隊が「タリスマン・セイバー25」において、中間距離能力（MRC）を有する米軍との連携を深める方針であることが報じられた。このニュースは、日米同盟の進化、ひいてはインド太平洋地域の安全保障戦略における重要な一歩として、業界内外から注目を集めている。
近年の国際情勢の緊迫化、とりわけ中国の海洋進出や台湾情勢の不安定化を踏まえ、日本は自衛隊の能力向上、特に長射程化への取り組みを加速させている。その中でも、今回焦点となる「中間距離能力」は、従来の「打撃力」とは一線を画す、より柔軟かつ効果的な抑止力として期待されている。
タリスマン・セイバーは、日米両国が主導する大規模な統合演習であり、これまでも互いの運用能力の向上や相互運用性の確立に大きく貢献してきた。今回、陸自がMRCを有する米軍との連携を明示的に打ち出したことは、単なる装備の導入や部隊編成にとどまらず、共同での運用構想、情報共有、指揮統制といった「運用面」での深化を目指すものと解釈できる。
これは、現代の安全保障環境において、個々の能力だけでは対応しきれない複雑な脅威に対し、日米が一体となって対処する能力をいかに高めるか、という喫緊の課題に対する具体的なアクションと言えるだろう。MRCは、敵の射程圏外から効果的な打撃を与え、敵の行動を阻止する能力であり、その運用には高度な情報収集・分析能力、精緻な連携が不可欠である。この演習を通じて、陸自は米軍の持つ先進的なMRC運用ノウハウを吸収し、自衛隊としての実効的な運用能力を磨く絶好の機会を得ることになる。
一方で、MRCの導入・運用には、装備調達、訓練環境の整備、そして何よりも周辺国からの誤解や過剰な警戒を招かないための慎重なコミュニケーションも求められる。今回の演習における日米の連携強化は、その能力を「防衛」と「抑止」のために活用するという、明確なメッセージを発信するものでもある。
タリスマン・セイバー25での MRC 連携強化は、日米同盟が冷戦時代の「軍事同盟」から、より高度な「抑止力・対処力」を共有する「戦略的パートナーシップ」へと進化していることを改めて示すものである。この進化は、インド太平洋地域の平和と安定に貢献する上で、極めて重要な意味を持つ。今後、陸上自衛隊がMRCをどのように運用し、日米同盟の抑止力向上に貢献していくのか、その動向を注視していきたい。
陸軍、タリスマン・セイバー25で中距離能力（MRC）を実戦配備・発射,Defense.gov
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