疲弊する公務員、その代償を問う
7月23日付のITBの記事は、驚くべき実態を浮き彫りにしている。ガザ地区で働く国連職員が、過酷な労働環境と疲労により倒れているというのだ。WHO（世界保健機関）の職員が拘束される事態にも発展しており、人道支援の現場がどれほど切迫した状況にあるのかを物語っている。
このニュースは、単に遠い異国の出来事として片付けるべきではない。経済という営みを支えるのは、そこで働く「人」である。その「人」が、本来なら人々の健康と命を守るべき公僕でさえ、極限状態に置かれているという事実は、我々に深い問いを投げかける。
我々が享受している豊かさ、安心、そして社会の維持。そのすべては、目に見える経済活動だけでなく、それを支える無数の人々の汗と努力の上に成り立っている。公務員もまた、その一員である。彼らが健康を損ない、職務を全うできなくなるような状況は、社会全体の脆弱化に直結する。
今、経済紙として問いたいのは、この「疲弊」の代償である。人道支援という、人類共通の善意に基づいた活動の現場でさえ、このような事態が起こる。それは、私たちがこれまで追求してきた経済成長のあり方、そしてその成長を支える労働環境全体への警鐘ではないだろうか。
労働時間の長さ、精神的なプレッシャー、そして不十分な支援。これらは、ガザの公務員に限った問題ではない。日本国内においても、過労死ラインを超える労働、メンタルヘルスの問題、そして社会保障の逼迫といった課題は、決して無縁ではない。
経済成長の追求は、確かに重要だ。しかし、その過程で「人」が犠牲になるのであれば、その成長は持続可能ではない。ITBの記事は、その痛烈なメッセージを我々に突きつけている。
我々は、このニュースを単なる悲報としてではなく、社会全体の構造的な問題提起として受け止めるべきだ。公務員、いや、すべての働く人々が、心身ともに健康で、尊厳を持って働ける環境を整備すること。それが、真に持続可能な経済社会を築くための、避けては通れない道である。
今こそ、経済の「量」だけでなく、「質」を問う時だ。そして、その「質」を定義するのは、他ならぬ「働く人々の幸福」に他ならない。
ガザ：飢餓と疲労で倒れる国連職員。WHO職員の拘束も。,Top Stories
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