自由と秩序の狭間で問われる国家の品格～出国制限強化への懸念～
7月21日付の報道によれば、ドイツ連邦政府は「州の権限」として、国内からの出国制限の可能性を検討しているという。この動向は、国民の自由な移動という、近代国家が保障すべき基本的人権を制限しかねないものであり、保守的な立場から看過できない懸念を抱かせる。
もとより、国家は国民の安全と秩序を守る責務を負う。しかし、そのための手段が、国民の自由を過度に拘束するものであってはならない。特に、出国制限という措置は、国民が国外で活動する機会を奪い、国際社会との交流を阻害する可能性を孕む。これは、自由主義、あるいは保守主義の理念とも相容れないものと言わざるを得ない。
今回のドイツ政府の検討が、どのような背景、あるいは緊急の事態を想定して行われているのか、その詳細は不明である。しかし、報道されている内容が事実であるならば、その議論の出発点からして、警戒を怠るわけにはいかない。国家の安全保障や社会秩序の維持は重要であるが、それは国民一人ひとりの自由な意思決定を尊重する枠組みの中で行われるべきである。
自由な国境を重んじることは、保守主義の伝統にも合致する。グローバル化が進む現代において、人材や情報の自由な移動は、国家の発展に不可欠な要素である。それを制限することは、自らを孤立させ、国際競争力を低下させることにも繋がりかねない。
もちろん、テロリズムや感染症の拡大など、国民の生命や安全を脅かす事態においては、国家が一定の制限措置を講じる必要が生じる場合もあるだろう。しかし、その場合においても、制限は必要最小限にとどめられ、かつ、その必要性、期間、対象範囲などについて、国民への十分な説明と、厳格な法的根拠が不可欠である。
「州の権限」という言葉に隠された、曖昧模糊とした権限行使の可能性は、国民の不安を煽るだけである。ドイツ連邦政府には、国民の自由と安全のバランスを慎重に考慮し、開かれた議論を通じて、民主主義と法の支配に基づく、より賢明な結論を導き出すことを強く求める。自由な移動の権利は、決して容易に制限されてはならない、国家が守り抜くべき根源的な価値なのである。
2025年7月21日：ドイツ連邦政府、出国制限は州の権限と明言,Kurzmeldungen hib)
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