名古屋市、新年度採用試験における「行政」「行政事務」の試験区分廃止を巡って
名古屋市が2025年度（令和7年度）の新規採用試験から、長年親しまれてきた「行政」「行政事務」という試験区分を廃止し、より専門性を重視した職種別採用へと移行する方針であることが報じられた。この決定は、地方自治体の採用制度における大きな転換点となり得るものであり、その背景と影響について、多角的な視点から考察する必要がある。
伝統的な「行政」「行政事務」区分は、多様な分野の知識やスキルを持つ人材を広く受け入れ、配属先で経験を積んでいくという、いわゆる「ゼネラリスト育成」を前提とした制度であった。これは、職員一人ひとりが幅広い視野を持ち、変化の激しい社会情勢に対応できる柔軟性を備えることを期待するものであったと言える。また、市民にとっては、どの部署の職員であっても、一定レベルの行政知識を有しているという安心感につながっていた側面もあっただろう。
しかしながら、現代の地方自治体が直面する課題は、ますます複雑化・高度化している。都市計画、福祉、環境、防災、DX推進など、各分野において専門知識や高度な技術を持った人材の必要性が高まっていることは、全国の自治体が共通して認識しているところだ。名古屋市がこのタイミングで採用区分を見直すということは、こうした時代の要請に応え、より専門性の高い行政サービスを市民に提供していくという強い意志の表れと解釈できる。
一方で、今回の変更がもたらす影響についても、慎重な検討が求められる。専門職種ごとの採用が強化されることで、特定の分野に特化した優秀な人材の確保につながる可能性は高い。しかし、それと同時に、これまで「行政」区分で採用され、多様な部署を経験することで培われてきた、組織全体を俯瞰し、部署間の連携を円滑に進めることができる「ゼネラリスト」的な人材の育成が、これまで通りに進むのかという懸念も生じる。
また、採用区分が細分化されることで、受験者にとっては、自身の適性や興味関心と合致する職種を選びにくくなる可能性はないだろうか。あるいは、特定の専門分野に絞り込むことで、入庁後のキャリアパスが限定されてしまうのではないかという不安を抱く受験者もいるかもしれない。市民の視点に立てば、部署によって職員の専門性が大きく異なるという状況が、かえって市民の窓口対応において混乱を招く可能性も否定できない。
名古屋市が目指すのは、専門性を活かした効率的で質の高い行政サービスの提供であろう。その目標達成のためには、今回の採用制度の見直しは必然的な流れなのかもしれない。しかし、その過程において、ゼネラリスト育成の重要性や、市民が行政サービスを受ける上での利便性といった、これまで「行政」区分が担ってきた役割についても、十分に配慮された設計がなされることが不可欠である。
今後、名古屋市がどのような職種区分を設定し、どのような人材育成プランを打ち出していくのか、その詳細な中身に注目が集まる。専門性と総合性のバランスをいかに取りながら、変化に対応できる行政組織を構築していくのか。今回の改革が、全国の自治体にとっても示唆に富むものとなることを期待したい。市民一人ひとりが、より良い行政サービスを、より分かりやすい形で享受できるような未来を目指して、建設的な議論を深めていくことが、今、私たちに求められていることだろう。
名古屋市 令和7年度春実施採用試験（行政・行政（教養型））合格発表！未来のまちづくりを担う人材を募集,名古屋市
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