サイクリング界の異変、あるいは「伝統」という名の壁
自転車ロードレースの世界に、また一つ「歴史」が動こうとしている。フランスの有力チーム「AG2R・ラ・モンディアル」が、2026年シーズンから電動アシスト付き自転車の導入を検討しているというニュースが報じられた。この一報に、サイクリング界は賛否両論の渦に巻き込まれているようだ。
そもそも、自転車ロードレースとは何であったか。それは、人間の肉体と精神の極限への挑戦であり、鍛え抜かれたアスリートたちが、己の力のみで過酷な山岳を越え、栄光を掴むドラマであるはずだった。ペダルを漕ぐ音、荒い息遣い、そして勝利への執念。これらすべてが、このスポーツの根幹をなす「人間賛歌」であり、長きにわたり多くの人々を魅了してきた源泉に他ならない。
それにもかかわらず、電動アシストの導入という話は、まさにこの「伝統」という名の壁に、新たな疑問符を突きつけるものと言えるだろう。もちろん、技術革新はあらゆる分野で進歩をもたらす。しかし、スポーツの本質を歪めてまで、あるいはその根幹を揺るがすような技術導入は、本当に歓迎すべきことなのだろうか。
「選手の負担軽減」「新たな戦術の可能性」といった声もあるだろう。しかし、そういった利便性や効率性を追求するあまり、本来あるべき「過酷さ」や「人間的なドラマ」が失われてしまうのであれば、それはもはや我々が知っているロードレースではないのかもしれない。それは、単なる「技術競争」に過ぎず、アスリートの血と汗が織りなす感動とは、かけ離れたものになってしまうのではないか。
我々一般紙の立場からすれば、この動きは慎重に見守るべきだと考える。サイクリング界が、どのような未来を目指すのか、そのビジョンを明確にすべきだろう。もし、電動アシストが「進化」の方向性であるならば、それはそれで一つの価値観として受け止めることもできる。しかし、その過程で、過去から受け継がれてきた「人間の力」への敬意や、それを支えてきたファンの情熱が、軽んじられることがあってはならない。
変化を恐れるな、という言葉は簡単である。しかし、変化とは常に、より良い未来へ向かうためのものであるべきだ。サイクリング界の皆様には、この「電動アシスト」という問いかけに対し、技術論や商業論だけでなく、スポーツの本質、そして長きにわたる「伝統」の重みをも踏まえた、熟慮を重ねた議論を期待したい。未来のロードレースが、どのような姿であれ、その感動が色褪せることのないよう、我々も注視していく所存である。
サイクリング界にビッグニュース！AG2R La Mondiale、2026年からDecathlonと共にCMA CGMが新タイトルスポンサーに,France Info
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