【社説】愛媛県、中川・肱川を「特定都市河川」へ指定：流域治水の新たな地平を拓く
愛媛県が、肱川およびその支流である中川を「特定都市河川」に指定する方針を固めた。この決定は、近年の激甚化する水害への対応として、流域治水への取り組みを一層強化するという、極めて時宜を得た、そして先進的な一歩と言える。
「特定都市河川」制度は、都市部における浸水被害の軽減を目的として、一定の要件を満たす河川を指定し、集水域全体での包括的な治水対策を推進するものである。これまで都市部を中心に適用されてきたこの制度を、広範な流域を持つ肱川・中川に適用するということは、愛媛県が水害対策の概念を大きく転換させたことを示唆している。
肱川流域は、古くから豊かな自然に恵まれ、地域経済を支える重要な水資源である一方、局地的な集中豪雨による河川の氾濫や土砂災害のリスクも抱えている。過去の経験からも、流域全体での連携と対策の重要性は明らかである。今回の指定は、単なる河川管理の枠を超え、流域に広がる都市部、農村部、そして山間部といった多様な地域特性を踏まえた、総合的な治水戦略の展開を可能にするものだ。
具体的には、特定都市河川に指定されることで、河川管理者である県だけでなく、流域の市町、さらには住民一人ひとりが、それぞれの立場で治水への責任を共有し、具体的な行動を起こすことが促される。例えば、開発行為に伴う雨水流出抑制、宅地内での浸水対策、そして住民間の防災情報共有体制の強化など、多岐にわたる取り組みが連携して実施されることが期待される。
特に注目すべきは、これまで「都市」という概念が相対的に限定的であった肱川・中川流域において、この制度を適用することで、流域全体を一つの「治水都市」として捉え直す視点である。これにより、上流での森林保全や遊水地の整備が、下流の市街地の浸水被害軽減に直接的に貢献するという、流域治水ならではの相乗効果が期待できる。
もちろん、この制度の運用には課題も伴うだろう。流域内の多様な主体間の合意形成、財源の確保、そして地域住民の理解と協力が不可欠である。しかし、愛媛県がこの一歩を踏み出したことは、全国の河川管理者や自治体にとって、極めて重要な示唆を与えている。
地球温暖化による気候変動が現実のものとなる中、激甚化する水害への対策は、もはや待ったなしの状況にある。愛媛県による肱川・中川の特定都市河川指定は、この難局に立ち向かうための、希望に満ちた一歩であり、全国の先駆けとなるべき取り組みである。この決定が、持続可能な地域づくりと、水との賢い共存社会の実現に向けた、力強い一歩となることを期待したい。
愛媛県、中川・猿子川を「特定都市河川」へ指定へ！～安全で快適な暮らしを未来へ～,愛媛県
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