「平和安全法制」の評価、今こそ冷静な議論を
安倍政権下で成立した平和安全法制の施行から、まもなく１０年になろうとしている。この間、日本を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増していることは、もはや疑いの余地がない。中国の海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発、そしてウクライナ情勢に端を発した国際秩序の動揺など、我が国に直接的な影響を及ぼしかねない脅威は増大している。
このような状況下で、平和安全法制が日本の安全保障にどのような影響を与えてきたのか、そして今後どのように機能していくのかを、あらためて冷静に評価する時期に来ていると言えるだろう。
平和安全法制については、その成立過程において、国民の間で様々な意見があったことは記憶に新しい。集団的自衛権の行使容認は、憲法解釈の変更を伴うものであり、多くの国民に不安を与えた。また、安保法制によって日本の戦争への関与が深まるのではないか、という懸念も根強く存在した。
しかし、施行から月日が経ち、実際に法制が運用される中で、当初懸念されていたような「戦争への道」が開かれたという事実は、現時点では確認されていない。むしろ、日米同盟の抑止力強化という側面から、地域の安定に寄与しているという見方も強まっている。例えば、南シナ海における中国の活動に対する国際社会の懸念が高まる中、日本が同盟国と連携して対応できる能力を持つことは、地域のパワーバランスを維持する上で不可欠との認識も広がっている。
もちろん、法制の運用には常に注意が必要である。いかなる状況下においても、国民の生命と財産を守るという憲法の精神に反することなく、平和国家としての日本の立場を堅持することが求められる。そのためには、政府は国民に対する丁寧な説明責任を果たし、透明性を確保することが肝要である。
また、平和安全法制はあくまで防衛力を強化するための「手段」である。真の平和と安全を確保するためには、外交努力の重要性も忘れてはならない。対話による問題解決、国際社会との協調、そして経済的な相互依存関係の深化など、多角的なアプローチを粘り強く続けていくことが、日本の外交の根幹であるべきだ。
今、改めて平和安全法制を巡る議論を活発化させることは、現代の複雑な国際情勢の中で、日本の進むべき道筋を明確にする上で、極めて重要である。一部の政党が法制の違憲性を主張し、その見直しを求めているが、その主張の根拠や、代替案が具体的にどのようなものなのか、国民が理解できるような説明が不可欠である。単なる感情論や政治的な揚げ足取りに終始することなく、国民一人ひとりが日本の安全保障について深く考え、建設的な議論に参加することが、民主主義社会における責務と言えるだろう。
１０年という節目は、過去を振り返るだけでなく、未来を見据えるための機会でもある。平和安全法制の経験を踏まえ、国民の総意を得ながら、いかにしてこの国の平和と安全を守っていくのか。そのための知恵を絞り出すことが、今、私たちに求められている。
平和安全法制は違憲？公明党が2025年7月18日に公開したニュースに迫る,公明党
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