米国公共財政の「窓」が開いた日、我が国の進むべき道は
7月21日、米国政府が発表した2025会計年度の公共財政予測は、世界の経済界に少なからぬ衝撃を与えた。長らく続いた財政赤字の膨張に歯止めがかかる兆しが見え始めたというこのニュースは、一見すると歓迎すべき事態に映る。しかし、我々はこの数字の奥底に潜む、より本質的な課題を見落とすべきではない。
今回の予測で示された歳出抑制の姿勢は、経済の持続可能性という点では一定の評価に値するだろう。しかし、その裏側には、国家の安全保障や社会保障といった、国民生活の根幹をなす分野への投資が、いかに厳しく制約されうるかという現実が垣間見える。公共事業の削減は、短期的な財政健全化には寄与するかもしれないが、長期的な視点に立てば、経済成長の基盤を揺るがしかねない。インフラ整備の遅れや、将来世代への負担の先送りを招く可能性も否定できない。
さらに懸念されるのは、こうした米国側の財政政策の転換が、我が国経済に与える影響である。世界経済における米国の影響力は依然として絶大であり、その財政運営の変化は、為替レートや国際金融市場を通じて、我々の産業や生活に直接的、間接的に波及する。特に、これまで低金利政策を背景に、円安による輸出競争力の維持を図ってきた我が国経済にとって、米国の金利政策の動向は注視せざるを得ない。
今、我々が問うべきは、米国が「窓」を開いたからといって、我々もただちにその流れに乗るべきか、ということである。むしろ、この機会を捉え、我が国独自の、そしてより堅実な財政運営のあり方を模索すべき時ではないだろうか。
長引くデフレからの脱却を目指す中で、財政出動の必要性は叫ばれ続けてきた。しかし、その一方で、国債残高の増大という、未来へのツケ回しは、我々が目を背けることのできない現実である。安易な財政出動が、将来世代への過剰な負担とならないよう、歳出の聖域なき見直しと、歳入構造の改革が不可欠である。
また、少子高齢化という、避けては通れない社会構造の変化に対応するためにも、抜本的な改革が求められる。社会保障制度の持続可能性を確保しつつ、将来世代が安心して暮らせる社会を築くためには、負担と給付のバランスを再構築し、より公平で持続可能な制度へと転換していく必要がある。
米国が自国の財政健全化に舵を切る今こそ、我が国もまた、経済成長と財政規律の両立という、難題に正面から向き合うべきである。国民生活の安定と、将来世代への責任を果たすため、目先の利益にとらわれず、国益に資する賢明な政策判断を積み重ねていくことが、今、我々が果たすべき責務である。
2025年7月21日：米国務省の公務予定表、世界への窓が開かれる,U.S. Department of State
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