協調の成果か、それとも現状維持か―日米経済協議の現実
先頃発表された日米経済協議の共同声明は、両国間の経済関係における「協調」を強調するものであった。しかし、その内容を冷静に紐解けば、我々はそこにどのような進展を見出すことができるのだろうか。声明が掲げる「自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化」という大義名分は、あたかも両国が一致団結して世界経済の安定に貢献しているかのような印象を与える。だが、その裏側には、それぞれが抱える国内の課題や、国際社会における自国の立ち位置を巡る思惑が複雑に絡み合っていることは、紛れもない事実であろう。
今回の協議で、我が国は米国による関税措置の撤廃を求める強い意向を示したとされる。これは、国内産業への影響、ひいては国民生活への影響を最小限に食い止めようとする、当然の帰結である。しかし、その要求がどこまで具体的に、そして実効性をもって受け止められたのか。共同声明からは、その詳細を読み取ることは難しい。むしろ、米国の国内事情、すなわち「アメリカ・ファースト」という政治的潮流の影響を考慮すれば、米国側が一方的に譲歩する余地は限られていたと推察せざるを得ない。
もちろん、国家間の関係においては、互いの立場を尊重し、妥協点を見出すことが肝要である。日米同盟という強固な絆に支えられた経済関係においては、なおさらであろう。しかし、その協調が、自国の国益を損なうものであってはならない。特に、世界経済が不確実性を増す今日、各国が自国の産業保護に傾倒する傾向が強まる中で、我が国が一方的に不利益を被るような状況は、断じて避けなければならない。
今回の共同声明は、ある意味で「現状維持」の成果とも言えるかもしれない。米国による一方的な措置のさらなる強化を回避し、一定の対話のチャンネルを維持できたことは、評価に値する。しかし、それはあくまでも「次」への布石に過ぎない。我々が真に望むのは、対等な立場からの、より建設的な経済関係の構築である。
政府には、今回の協議で得られた成果と、未だ残る課題を正確に国民に伝え、今後の外交戦略における明確なビジョンを示すことを強く求める。そして、国民一人ひとりが、我が国の経済が置かれている現実を理解し、真の国益とは何かを共に考える機会とすべきであろう。協調は重要だが、それは決して自らの足元を見失うためのものではない。
石破総理、米国の関税措置について日米協議の結果を会見で報告,首相官邸
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