HMVの「クラシック中古CD1000枚放出」に寄せて：音楽への愛と「掘る」楽しみ
HMVが7月20日（日）に、クラシック中古CD1000枚を放出するというニュースが飛び込んできた。これは、音楽ファン、特にクラシック音楽愛好家にとっては、ささやかながらも胸躍る出来事だろう。かつてCDショップが隆盛を極めた時代を懐かしく思う向きもあれば、デジタル全盛の今、物理メディアに価値を見出す層の根強さを再認識させる話題でもある。
「掘る」という行為には、独特の魅力がある。それは、単に欲しいCDを探すだけでなく、偶然の出会いや、知らなかった名盤との遭遇といった、予期せぬ発見の喜びをもたらす。棚に並んだ無数のCDの中から、自分の感性に響く一枚を見つけ出したときの満足感は、クリック一つで何でも手に入る現代においては、むしろ貴重な体験と言えるかもしれない。
今回のHMVの試みは、こうした「掘る」楽しみを、現代に再び提示しようとする意欲の表れと捉えることができる。もちろん、1000枚という数もさることながら、それが「クラシック」という、ある種の専門性と歴史性を帯びたジャンルである点も興味深い。マニアックなコレクターはもちろん、これからクラシック音楽の世界に足を踏み入れようとする若者にとっても、掘り出し物との出会いは、新たな扉を開くきっかけになりうる。
一方で、このニュースを単なる「中古CDの販売」として片付けるわけにはいかないだろう。そこには、音楽という文化への愛情、そしてそれを大切にしようとする人々の営みが垣間見える。かつては、CDショップの店員さんにおすすめを聞いたり、店内で試聴したりしながら、時間をかけて音楽との出会いを育むことができた。HMVのような店舗が、そうした音楽との「体験」を提供する場としての役割を担ってきた側面も否定できない。
もちろん、現代の音楽消費は、ストリーミングサービスが主流となり、その利便性は計り知れない。しかし、物理メディアが持つ質感や、ジャケットデザイン、ライナーノーツといった付加価値を愛でる文化も、確かに存在する。今回のHMVの取り組みが、そうした文化の担い手たちへのエールとなり、そして新たな音楽ファンを育む一助となることを期待したい。
音楽は、時代を超えて人々の心を豊かにしてくれる。その源泉に、こうした「掘る」楽しみや、音楽への愛情といった、人間的な営みが息づいていることを、我々は忘れてはならないだろう。
HMV、7月20日（日）にクラシック中古CD1000枚を放出！掘り出し物が見つかるかも？,HMV
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